「Fallen Angel:パンティ&ストッキングwithガーターベルトED 」 読モ?

 話はさかのぼって、優歌ゆうかさんのバイト初日、高山たかやま 唱子しょうこはカラオケボックスでヤケ歌をしていた。


 徳田とくだ 亜美さんを強引に連れて。


 独り寝の寂しいときは、「Fallen Angel」を歌うに限る。


「あーん。優歌さーん。どうしてバイトなんてー」


「しょうがないじゃん。あの子、遠慮しいだからさ。気を使うんだって」

 細長いチョコスナックを食べながら、亜美さんが曲を入れた。メジャーなアニメソングだ。


 優歌さんの性格は、行動で分かっていた。

 彼女はホイホイとお金につられたりしない。


「そうですわ。わたくしもバイト致します」

 我ながら、良きアイデアだと思う。


「塾通ってるじゃん? 大丈夫なん?」

「短期バイトにしますわ。すぐに代金をもらえるような」


 拘束されず、残業もない仕事が望ましい。


「一緒のCD屋さん?」

「それだと、わたくしが理性を保てる自信がありませんわ」


 唱子が足を引っ張る可能性がある。

 とばっちりで優歌さんまでクビになっては堪らない。


「父のツテがございますから」

 スマホをピポパと扱い、父に連絡を入れる。

「お父様? お仕事中のところ失礼いたします。今は大丈夫なんですね? 実は、アルバイトをしようと思いますの。許可をいただけます?」


 父からは、

「人を使う側に立つ勉強をするなら、バイトはいい経験になるかも」

 と好意的に受け止めてもらえた。


「そんなに拘束されない仕事を選びますわ。はい。失礼致します」


 父の了承を得られたので、心置きなくバイトができる。


「じゃあさ、ちょっと頼まれた仕事があるんだけど。今から行ってみる?」



 そう行って呼ばれたのは、近くのスタジオだった。



「読モ? 毒グモではなくて?」

「何時代のギャグなん? 読者モデル」


 地方紙で小旅行の特集組むから、現地を取材をしてほしいという。


「自分に読者モデルなど、務まるでしょうか」

「変に熟れている子よりも、自然体の子がいいので」


 素人モデルに頼みたいらしい。


「お仕事は、どのような?」


 テーブルにあるまんじゅうと麦茶をいただきながら、唱子はスタッフから話を聞く。


「海水浴場と温泉です」

「肌を往来で晒すのですか?」

「そんな大げさな」


 亜美さんと話していると、責任者の女性が名刺をくれた。説明によると、カメラマンもスタッフも全員女性なので、安心してくれとのこと。


 ならばいいだろう。


 あと、メンバーはもうひとり。合計三人で撮影に望む。

 学校からの紹介だったので、すべて我が校の生徒で固めるとか。


 最後の一人が、こちらに手を振ってきた。 


「やほー、みんなー」


 現れた最後の一人に、唱子は驚く。


「大沢さん!」

「ハムちゃん?」



 我がクラスの学級代表、大沢おおさわ 公江きみえさんだったのである。

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