「REACH OUT:勝負師伝説 哲也OP」 和田アキ子って、アニソン歌うんだ⁉

 期末試験を終えて、二週間の休講期間を迎える。

 だが、亜美ちゃんたち軽音楽部に休みはない。文化祭に備えて、ここぞとばかりに練習である。

 私たちマイナーアニソン友の会も、見学させてもらった。


 しかし、亜美ちゃんは納得がいかない模様である。

 

「文化祭、何歌おっっかなーっ?」

「かっこよさで攻めるなら、『ダンガンロンパ』の『Never Say Never』などはいかがですか? 亜美さんのユニットは、男女混成でございますでしょ?」

 唱子さんが、スマホを亜美ちゃん近づけた。曲を聴いてもらう。

 が、亜美ちゃんはばつ印を作った。

「パス。ラップがあるからダメ。難易度が跳ね上がっちゃう」


 同じ理由で、『ペルソナ』系の歌もアウトに。

 一応、ススメてはみたが。

 

「じゃあ、『星のすみか』は? 無難に」

 


「あーっ! 『TIGER & BUNNYタイバニ』がございましたわね!」



「唱子っちどしたん? 急にテンションがガン上がりしたんだけど?」

 

 タイバニ好きなんだ。


 動画サイトに、バンドの公式ページがある。そこだと無料だったので、聴いてみた。

 

「どう、歌えそう?」

「うーん。難しそう。でもいい歌だね。採用で」

 低音と高音の差が激しいために、歌いづらそうだ。が、好感触っぽい。


「亜美ちゃんは、どんなのがいい?」


 しばらく考えた後、亜美ちゃんは口を開く。

「ガールズポップっぽいヤツ。あとは、ちょい尖ったのがいいかな?」


 ハードなアニソンもいける口らしい。

 

「だったら。そうだな……『いけないボーダーライン』とかは最高なんじゃ?」


「マクロス系で攻めなさるのね。いいですわね!」

 私が提案すると、唱子さんのテンションがさらにバク上がりした。

「特に『デルタ』は、放送時はシビレましたわ。ガールズユニットモノですし、ベストですわね」


 第一話で、巨大ロボットがこの曲に合わせて、ブレイクダンスを踊るのだ。そういった演出が最高だったアニメである。戦場での生死をテーマにした歌詞も趣が深い。


「そんなにすごいの?」

「平成アニソン大賞、キャラクターソング賞を受賞した作品ですわ! 名曲ですってよ!」

「分かった。覚えるよ!」

 スマホのメモ帳に、教わった曲をメモしていく。


「盛り上がる系はいいとして、ポップ系か、しんみり系ってない?」


「そうだね。『フレ降レミライ』なんて、どうかな?」


「優歌、なにそのバッタモンみたいなタイトル?」


 やはり、そういう反応になってしまうか。『ハレ晴レユカイ』を知っていれば。


「本家に劣らぬ名作なんですよ! 『長門有希ちゃんの消失』は!」

 唱子さんが猛反論する。

「うん。私、あっちのハルヒめちゃ好き!」

「ですわよね! 原典みたくKYの問題児かと思いきや、すこぶるいい女なんですわ!」

 私たちは、思い出話で盛り上がった。

 

「ちょっと盛り上がってるトコロ悪いんだけど……」


「ああ、ごめんごめん」

 私たちは我に返る。

 

「アニソンぽくないやつがいいなら、『REACH OUT』は?」

「優歌さん、たしかに『哲也』のOPは名曲です。が、少々マニアックすぎるかと」


 私たちが問答していると、亜美ちゃんが尋ねた。

「誰の歌?」

「和田アキ子だよ」 

「マジで⁉ 和田アキ子って、アニソン歌うんだ⁉ 一番アニメとかディスりそうなのに」


 たしかに、オタクカルチャーにはあまり理解がなさそうだ。

 

「現実主義者っぽい印象を受けますが、実際はそうでもないのです。


「メタルギアソリッド3の主題歌は英語なのですが、和訳版は和田アキ子が歌っていますのよ」


 曲は素晴らしいということで、残念ながらボツに。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る