「君は友達:僕は友達が少ないOVA版主題歌」 理解し合ったんじゃない。思い合ったんですわ

「また、時間があったら食べようか」


 帰り支度をしつつ、メニュー表を確認する。

 まだまだ食べたい料理がズラリと並んでいた。


 自分の胃袋が丈夫なら、もっと食べていただろう。


「そうですわね。次はカレーなんていかがでしょう?」

「違ったメニューを食べるのもいいね!」


 オムライスも丼も捨てがたい!


「唱子さんは、カレーって『まっしろわーるど』みたいな、甘口がいい感じ?」


『未確認で進行形』の主題歌だ。


「辛いものも平気ですわ!」


 なんだか、マイナーアニソンを語らう以外にも、楽しみが増えてきた。

 でもいいよね。友の会だし。友達がいい。


「こうして友垣と食卓を共にするなんて、はじめてですわ」

「友達がいなかったの?」

「レッスン続きでしたから。マイナーアニソンにハマった後も、賛同者なんておらず」


 ずっと、一人ぼっちだったんだ。


「私は、唱子さんの友達でいられてるかな?」

「どういう意味でしょう?」

「時々思うんだよ。唱子さんと、私は釣り合ってるのかなって」


 私を安心させるかのように、唱子さんは微笑む。

「ご安心を。わたくしは生まれ、稼ぎ、趣向などで、人を差別したりなんかしませんわ」


 虚空を見上げ、唱子さんは言葉を繋いた。

「いわば、『君は友達』とお呼びしたいですわ」


「『トイ・ストーリー』?」


「いいえ、『はがない』ですわ」


『君は友達』は、『僕は友達が少ない』の劇中歌である。

 一人ぼっち同士が友だちになっていく過程を描いた歌詞が、実に泣けるのだ。


「あなたと会うまで、わたくしはひとりぼっちでした。いっそ、孤高を極めてしまおうかと思ってしまっていたほどに」


 私も、孤独でありすぎた。

 一人でも笑えるとさえ。

 自分の嗜好など、誰からも理解されないんだと。


「ですが、わたくしたちは出会いました。きっと私たちは、理解し合ったんじゃない。思い合ったんですわ」


 歌の歌詞を引用して、唱子さんは私を励ましてくれた。


「友だちになってくれて、ありがとう。唱子さん」

「わたくしも、感謝しておりますわ。優歌さん」

「また、ラーメン食べようね」

「ご一緒致します!」


 すっかり遅くなったので、唱子さんを送る。


「悪いですわ」と行っていたけど、こんなに遅くまで唱子を連れて歩いた責任もあった。おうちも見たいし。


「ここが、唱子さんの」


 小さなマンションねえ。うちより立派なんだけど?


 友だちになるよ、といった私の決心が、早くもゆらぎ始めたぞ。


「では、また明日」

「また明日! おやすみなさい!」


 マンションへ消えていく唱子さんの背中を、私は手を振って見送った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る