「BH~B型H系~:B型H系 挿入歌」  わたくしの元へ、永久就職なさいませ

「うらやましい。そんな環境で働いてみたいよ」

「お料理ができませんと、雇ってもらえませんわよ。レンチン料理とは言え、知識がないといけませんし」


 そのメイドさんは、時短料理が得意だそうだ。


「いいなー、私も強かったら、唱子さんのメイドになれたのかなぁ?」


 唱子さんに雇ってもらう自分をイメージする。


 モップでフローリングの床を拭き、お風呂を掃除して、お料理を作って。


「料理は、今はカレーかオムライスくらいしかできないけど、覚えるよ」


「優歌さんが、わたくしの、メイド……尊くて死にますわ」

 ぱたり、と唱子さんが気絶した。


「わあ! しっかりして、唱子さん!」

 そんなにイヤだったのかな。


「お嫁さんになってくださいまし」

「ちょっと唱子さん?」

「わたくしの元へ、永久就職なさいませ」

 寝言を言いながら、唱子さんは、しばらく起き上がってこなかった。


「ラーメン伸びちゃうよ」

「はっ!」


 あ、起きたか。


「夢の中で『BH~B型H系』がかかりましたわ! すごく幸せな夢だったような気がしましたが、起きたら忘れてしまいましたわ! わたくしの脳内フォルダのおバカさん!」

 やたら悔しがっている。


 どんな夢だったのだろう? 『B型H系』って、ちょいエロなアニメだよね。大沢さんとカレシに刺激されちゃったのかなぁ。


 やっぱり、唱子さんも女性なんだなーと。


「まさか、男の人との熱いひとときを?」

「わたくしは殿方には興味がありませんわ!」


 そんな圧で来られても!


「そういう優歌さんは、どうですの?」


「え、私?」

 自分を指差して考える。


 どうだろう。考えたこともないなぁ。自分が男性と一緒にいるシーンなんて、まったくイメージできない。


 亜美ちゃんも特に、男性を紹介してくることもなかった。私が異性に興味がないのを、察しているのだろう。


「今は、友達と一緒に遊んでる方がいいや」


「その御心を、ぜひとも保っていてくださいまし」

 唱子さんは、私の言葉の後でそう告げた。


「私に恋人ができたら、ダメかな」


 唱子さんは、首を振る。

「そうは言いません。優歌さんに想い人ができたのでしたら、それは避けられません」


 ただ、と唱子さんは付け加えた。


「今は、わたくしを見てほしいですわ。わがままでごめんなさい」


「いいって。気にしないで」

 すっかり冷えたスープを飲み干して、私たちは食事を終えた。


「ごちそうさま!」

「ありがとうございます。新しい扉を開いた気がしますわ」


 唱子さんは、この店のラーメンをかなり気に入ったみたいだ。

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