「カルナバル・バベル:BLUE SEED OP」 わたくしと、デ……

「にぎやかな方でしたわね」

 放課後、唱子さんが亜美ちゃんの印象を教えてくれた。

「音楽に関わっていらっしゃるから、アニソンに偏見がない点が好印象でした」

 

「マイナーアニソン友の会には、入れづらいけど」

「ですわね。普通のアニソンもご存じなかったようですし。楽しい方ですから、ぜひにと思ったのですが。バンドでお忙しいようですし」

 

 唱子さんも、同じ意見らしい。


 亜美ちゃんは、ライブハウスへバイトに行ってしまった。掃除と接客の仕事を少しして、出番が来たら自分もステージに上るらしい。


「練習してバイトして演奏してだもんね。プラス部活動でしょ」

 

「青春を謳歌してらっしゃいますわ」

 

 私には、想像もつかない世界だ。


「私も、アニメ研究部を続けていたら、青春できたのかな」

 考え事をしていたら、思わず言葉に出てしまった。



「優歌さん?」


「ご、ごめん! 忘れて! せっかく声をかけてくれたのに、変なこと言っちゃって!」

「お構いなく」

「構うよ! 昨日だってごちそうしてくれたんだから、今日は私が!」



「お気遣いは無用ですわ。それより、今日は……デ」

 なぜか、唱子さんが言いよどんでいる。

 普段は、自信満々なスタイルを崩さないのに。


 

「デ?」


  

「今日は、デ……デュエットしてくださらない?」


 デュエット、そんなのでいいのか。なんと欲のない。


「うん。いいけど」


「ありがとうございますわ。はあ……」

 唱子さんが、笑顔をみせている。

 けどなぜか、表情がどこか残念そうだった。



 いきつけのカラオケボックスへ。

 

 昨日は、交互に歌いあったので、今日は二人でも歌える曲をリクエストされた。



「マイナーソングのデュエットと言えば、何がいいでしょうか」


 二人してタブレットを操作していると、ナイスなタイトルが目に飛び込む。


「『カルナバル・バベル』なんてどう?」



「まあ、『BLUE SEED』ですか! いいですわね!」



 これも、90年代アニメの主題歌である。


『BLUE SEED』は、漫画原作のアニメだ。林原めぐみがヒロイン、井上和彦がパートナー役という、今や大御所の声優陣で固めていた。

 これでマイナーな作品というから、90年代がいかに恐ろしい時代だったかを伺わせる。


「どちらのパートを担当なさる?」



「マダオ!」


「では、女性パートはわたくしが」



 曲がスタートした。



「素敵ですわ。こうしてマイナーな歌を共有できるなんて」


「ねえ、私は、唱子さんと歌うことができて、幸せだよ」


 私が言うと、唱子さんは「わたくしもです」と返す。

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