「路地裏の宇宙少年:ダイガード OP」 1990年代は、マイナーアニソンの魔窟ですわ
「でも、空色デイズは基本過ぎたかなって。マイナーソングで攻めるなら、何だったろう?」
「わたくしに相談してくださったら、とびっきりのをご紹介しましたのに」
「何を?」
「『路地裏の宇宙少年』ですわ」
「ああ、『ダイ・ガード』かーっ!」
見事なポイントを抑えられ、私は感服した。
チョイスが完璧すぎる。
「どういうアニメなん?」
「ブラック企業の社員が巨大ロボットに乗って、エイリアンと戦うの。でも最初は弱くて。ロボがブリキのハリボテだから」
「面白そう!」
亜美ちゃんが食いついた。
「名作ですわ。主題歌も、野球選手の応援歌に使われていますのよ」
「愛されてる!」
「1990年代は、マイナーアニソンの魔窟ですわ」
そこまで話題になって、亜美ちゃんが唐突に手を挙げる。
「ちょっといいかな。二人が思う『マイナーソングの定義』って、なんなん?」
私と唱子さんが、目を合わせた。
「難しいですわね。売上という考え方では、定義づけできませんし」
「なんで?」
「『絶対無敵ライジンオー』のOP 『ドリーム・シフト』も、『ガンダム0083 STARDUST MEMORY』 の『MEN OF DESTINY』も、売上が二万枚を超えることはなかったそうですわ」
当時は、バンド音楽全盛期だったしね。
「中でも、当時は売上二万枚もいかなかったゴールデンアニメの楽曲もありますわ」
「そんなの、あったっけ?」
「オタクなら、誰でもご存知の曲ですわよ」
スマホを操作して、唱子さんは答えを見せてくれた。
「『セーラームーンR』の『乙女のポリシー』ですわ」
「マジで⁉」
私も知らなかった。
アニメオタクならみんな知っているですら、売上に貢献していない。
知名度は最強レベルなのに。
「90年代は、マイナーアニソンの宝庫でもあり、魔窟ですわ」
「何が流行ってたの? 90年代って?」
「WANDSの『世界が終るまでは…』がオリコン1位だそうですわ」
「『SLAM DUNK』かー。なんか納得だぁ」
「怪物的ヒットと言えば、B.B.クィーンズの『おどるポンポコリン』でしょうね」
私は、ため息を返すしかない。
お化けヒットばかりがある90年代で、生き残ること自体が難しかったのだな、と。
「今は本当にいい時代なのです。誰かが聴いてくれますし。ネットは広大ですから」
有意義な昼休みが、終わりを告げる。
「楽しかった。また話を聞かせてくれる?」
「もちろん。人に物を教えるのは、快感ですわ。亜美さんとお呼びしてもよろしくて?」
「サンキュ。よろしくね、唱子っち」
亜美ちゃんが、自分の席へ帰っていく。
「楽しい方でしたわね」
「うん。亜美ちゃんがいなかったら、孤立していたよ」
「今は、わたくしもいますわ」
「ありがと、唱子さん」
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