「劇場支配人のテーマ:ニンジャスレイヤー ED」 ウチはガールズバンドだっつの

「あとあれだっけ。『中二だから、そろそろ処女捨てたい』だっけ?」

「『中二病でも恋がしたい』ね」

「それそれ、なんかそれのエンディング」



 タイトルを忘れてしまった亜美ちゃんの代わりに、唱子さんが答える。

 

「『INSIDE IDENTITY 』ですわね」



「それだ! ありがと高山さん!」


「それも、お見事なチョイスですわ。若いオタクに刺さる歌詞が素晴らしいのです」



「あれよかった。一番盛り上がったよ。あたしが処女捨てたの小六だけど」



 異次元の会話についていけず、唱子さんがむせる。

「それ、真実ですの?」


「まあ、そっからギャルやってるし」

 

 確かに、中学の当時から彼女は黒く、胸もFカップだったっけ。


「つかぬことをお聞きしますが、お相手は?」

「中一のヤンキー。市民プールで泳いでたら友達とナンパしてきてさ。同い年だと思ってたんだって。三対三の交代交代で、盛り上がったなぁ」

「ちょっと何をおっしゃっているのか、分かりかねますわ」


 体験談が異次元すぎるよ、亜美ちゃん。



「と、とにかく優歌さんの選曲は的確でしたわね」

 あっ、唱子さん、日和って話題変えたな。


「無難っちゃあ、無難なところかなと思ったけど」




「十分ですわ。アニソンだけどアニソンっぽくない、女子ウケしそうなチョイスですわ。特に『蒼い春』なんかは、アニソンを茶化してディスる歌詞などがありますからね」


 

「angelaの曲だったら『乙女のルートはひとつじゃない!』もいいかも」


 同じangelaの曲だというと、亜美ちゃんが食いついてきた。

 

「どんな曲なん?」

 

 亜美ちゃんが聞くので、私は、angelaの公式サイトを開く。


「こんな感じなんだ。ゲームの世界かー。いいじゃん!」


 気に入ってくれて何よりだ。


 

「てっきり優歌さんのことだから、『ニンジャスレイヤー』のED、『劇場支配人のテーマ』を紹介するものかと」


 三分弱しかない曲なのだが、恐ろしく歌詞がキレまくっていて、頭に残りやすい。


「あー、うん。考えたよ。テレビで流れたもん」

  

 明石家さんまの番組で、東大生がコンパで歌った曲として、ネットで話題になった。

 場がドン引きしたのは、印象深い。 


 

「それはさすがに尖り過ぎかなーって。ネット界隈だと、有名な曲なんだけどね」

「『GEEKS』の『NINJA SOUL』も、凄まじいですわね」

「あれも大概だね。スキだけど」

「ええ。スキなんですの。聞くだけなら実際アレですわ」


 キャッキャと語らう。

 これが女子会か。

 話題がマイナーアニソンとは言え、自分たちはちゃんと女子会ができていると思う。


 

 だがなぜか、亜美ちゃんがバツの悪そうな顔になる。


 

「実はさ、アニ研に教わった曲がそれだった。聴いてさ、ドン引きした。ウチはガールズバンドだっつの」


 それで私のところに来たのか。ご愁傷さま。

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