「恋をするたびに傷つきやすく…: りりかSOS OP」 歌手の方が、小室ファミリーですから
そう。亜美ちゃんの叔父は、特撮ソングを歌っている現役のロック歌手だ。
「修羅場ってて、聞けなかったんだよね」
私も「友達の方に聞いたほうが確実かも」と返答した。
そしたら、「ガチ勢過ぎて理解できなかった」らしい。
私くらいの知識が丁度いいという。
「メンバーが『鬼滅』くらいしか知らんくてさぁ。あのときは助かった」
「何を教わりましたの?」
「『空色デイズ』、『蒼い春』、『シュガーソングとビターステップ』あとは、『恋をするたびに傷つきやすく…』」
「なかなかではありませんか」
シャケの塩焼きを皮ごと食べながら、唱子さんがコクコクとうなずく。
「ちなみに、『空色デイズ』は、矢作紗友里さんバージョンをおすすめしまして?」
「もち!」
タコさんウインナーを頭だけかじったまま、私はサムズアップを決める。
「ひょっとして、『恋をするたびに傷つきやすく…』も」
「主演声優さんのバージョンをススメたよ」
「さすがですわ優歌さん!」
亜美ちゃんが、気まずい顔になった。
「おふたりとも、ごめん。ちょっと何言ってるかわかんない。会話が異次元過ぎて」
「ああ、申し訳ありません。ついつい盛り上がってしまって」
唱子さんが、頭を下げる。
「えっと、空色デイズだっけ? あれって色々バージョンがあるの?」
「うん。別のアニメで声優さんが歌うシーンがあるんだよ。まさに『アニメを知らない女の子が、アニソンを高らかに歌ってオタクのみんなをアゲる』シーンで!」
まさに、当時の亜美ちゃんと同じ状況だ。
歌はドメジャーでも、カバーバージョンとなった途端にマイナー化するという現象である。
「あのさ、『恋をするたびに傷つきやすく…』を歌った時、一部で『うおーっ!』って盛り上がったんだけど」
「それはそうでしょう。歌手の方が、小室ファミリーですから」
「マジで?」
イチゴ牛乳のパックを、亜美ちゃんが握りつぶしそうになった。
『りりかSOS』というアニメの主題歌なのだが、小室哲哉と秋元康という最強タッグでOPテーマを手掛けた。
いわば最強クラスのマイナーアニメである。
「特別珍しいことはないのですわ。小室哲哉が所属しているTMネットワークは、『シティーハンター』の曲を多数手掛けてらっしゃいます」
小室哲哉自身も、『3』では自らが『RUNNING TO HORIZON』という名曲を歌唱しているのだ。
「小室ファミリーのアニソンと言えば、『恋しさと せつなさと 心強さと』あたりからでしょうか」
「知ってる! ママがよく歌うやつだ」
ようやく知っている楽曲が出たからか、亜美ちゃんのテンションが上がった。
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