「輝きは君の中に:忍空 OP」 マイナーアニソンの女王ですわ

「今日はどしたん、優歌?」


「ああ、亜美あみちゃん」

 お昼休み、中学からずっと同じクラスである、亜美ちゃんが話しかけてきた。

 亜美ちゃんはいわゆる黒ギャルで、胸も規格外に大きい。天パをシュシュでザックリ結んでいるだけなのに、すごくカワイイのだ。


「朝から機嫌よさそうじゃん」

 私の後ろにいる男子に「ゴメンね」と詫びた直後、亜美ちゃんは彼の席に腰を落とす。


 ちなみに、彼女はオタク仲間ではない。

 なので、アニメの話題などは特に振らないのだ。

 

「ちょっとね。高山さんと仲良くなれちゃって」

 

「よかったじゃん」


 ニコニコと、亜美ちゃんが私のほっぺを指で小突いた。

 

「正直、あんたアニメ部を辞めたら、ぼっち化するかもって心配していたんだよね」


「ありがとう。気にしてくれて」


「うん。あたしじゃあ助けられないって思っていたから、ホントよかった」

 

「心配かけちゃったみたいだね。けど、もう平気」


「いい感じじゃん。お話詳しく」


 他の女子たちが、亜美ちゃんをお昼に連れて行こうとしたが、「こっちで食べるから」と断った。

 

 これは、引き上げてくれないパターンだな。



「優歌さん。お昼を共にしませんこと?」


 

「唱子さん。どうぞ」


 入れ違いで、唱子さんがお弁当を持ってあいさつしてきた。


 席を組み合わせ、トライアングルになる。


 私もお弁当を広げた。

 

「こんにちは。軽音部の徳田とくださんでしたわね?」

 

「そうだよ。徳田 亜美。優歌とは、中学からの同級生」

 クリームパンをかじりながら、亜美ちゃんはイチゴ牛乳を口に含む。



 軽音楽部に入っていて、ライブハウスでバイトしている。

 アニソンをバカにしない、いい子なのだ。



「それは、CDですか?」

 唱子さんが、机の上にあるCDに目をやる。


 


「次のライブでやる音楽を、優歌から借りててさ」


 私が貸したのは、古いアニメのサウンドトラックだ。母の秘蔵版である。


 

「ほほう、『輝きは君の中に』ですか。鈴木結女といえば、マイナーアニソンの女王ですわ」

「私も、そう思って貸したんだよね。今聴いても色褪せなくてビックリした」

「名曲ですわ」

 


 楽しく話す私たちのことを、亜美ちゃんが不思議そうに見ていた。

「どうしたの、亜美ちゃん?」

 

「つーか」

 亜美ちゃんが尋ねてくる。

「二人は、どういった関係で仲良くなったん?」

 

 もっともな質問だ。

 普通、私たちに接点など見当たらない。

 かたやお嬢様、かたや平民だ。

  

「マイナーソングで結ばれたのですわ」

「そうそう。お互いマイナーなアニソンがスキってことで、意気投合して」


 興味深そうに、亜美ちゃんが話に耳を傾けている。


「意外な接点だなー」



「徳田さんは、優歌さんとどうお知り合いになったの?」

  

「ライブで盛り上がるアニソン教えて、と私に聞いてきたのがきっかけで、親しくなったの」


「へ? たしか、徳田さんって、ご親戚がアニソン歌手だったはずでは?」

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