第18話 託された想い

「私は死んでも死にきれませんでした。今もまだ、時子は鳴彦に騙されています。あの男を殺してやりたい。時子に危険を知らせ、救いたい。私がそう願いながら息を引き取った時、鳥が甲高く、鳴いたのです」


「気が付くと私は、このような化け物になっていました。私は鳴彦と時子を引き離すため、言葉も話せず、羽ばたくことしか出来ずとも、時子のもとへ通ったのです。どうしても、どうしても妹を。時子を助けたい。父親が違えど、あの子は私の大切な妹なのです」


頼子の瞳から涙が零れる。俺はそれを、人差し指でぬぐってやった。


「ありがとう。…貴方が何方かわかりません。でもどうか。時子を助けて。鳴彦から彼女を救って…」


そこで、頼子は目を閉じて、ぐったりし。そのまま静かに息を引き取った。


俺は彼女の遺体を床に横たえる。するとそれは霧のようにかき消えた。


アンジェラが神妙な顔つきで俺を見ている。

「静寂、どうするの?」

「どうもこうもないさ。仕事は終わりさ」

「そんな…」

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