第14話 鳴彦の話
追い払うだけでは解決はしていない。しかし、もしかしたらただの鳥が操られている可能性もあるし、みだりに殺したくはなかった。
有栖川邸は現在無人故、これ以上することはないので次に移動する。向かったのは病院だ。ここには時子の叔父、鳴彦が入院している。
病室は個室なので、話しはしやすい。
鳴彦は怪我は重くはなかったが、精神的ショックが大きいようだ。しかし、俺達が訪ねると話をしてくれた。
「昨日は助けて頂きありがとうございます、九条さん。…しかも、あんなところを見られて…」
「いえいえ、仕事ですからね。で、単刀直入に聞きますが、あのハーピーに時子さんが襲われるのに、心当たりあります?」
俺の問いに、鳴彦は辛そうな表情を浮かべた。
「あれは…頼子さんだと思います」
「頼子?」
「時子さんのお姉さんの名前です。つい最近、頼子さんは亡くなりました。彼女は…時子さんを妬んでいたんですよ。」
「妬んでいた?」
「はい。二人は声楽家になるのを目指していましたが、才能は妹の時子さんの方が上で。
ご両親も時子さんの方を可愛がっていました。だから、彼女は妹を恨みながら死に、あのような化け物になって時子さんを殺めようとしているのではないかと。
私は…叔父という身ではありますが、時子さんを…時子を守りたい。九条さん、どうかハーピーを退治してください。あれはもう…頼子さんではない。」
事情を聞けば一応筋は通っているようにも思うが。
「でもハーピー…頼子さんは時子さんに「騙されないで」と言いました。あれはどういう意味でしょうか」
「そんなの、私は知りませんよ。とにかくあれは化け物なんだから、言うことを聞く必要とかないですよね?…そろそろ疲れました、寝てもいいですか?」
鳴彦がそう言うなら、話を打ち切るしかなかった。
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