第12話 時子の話

開け放たれた窓の向こうには、何事もなかったかのように暗い闇が広がっている。


しかし、部屋には大量の鳥の羽根が散乱しているし、男は肩に食い込んだ爪のせいで怪我をして呻いてるし、まさに惨状である。


「時子さん、フロント行って車を手配させます。彼は…叔父さんですな、すぐに病院に連れていった方がいい。…あと、服を着ておいて下さい。」


そう言い残すと俺は部屋を出ようとした。と、時子に呼び止められ。


「待って下さい、あの、私と叔父様は…」


「そんな話しは後でしょ」


色恋沙汰に興味はない。俺は廊下へと駆け出した。


数時間後…


結局、叔父さんとやらは病院に運ばれて、それほど大きな怪我を負ってはいないことがわかった。


夜中で寝不足ではあったが、俺とアンジェラは時子から話を聞くことにする。


流石に時子は青ざめた表情だ。


「彼は…亡くなった父の弟、つまり私の叔父にあたります。父と母が交通事故で亡くなったのが3ヶ月前。それから、この旅館を経営しています。」


ぽつりぽつり話す時子。


「その後に、姉が亡くなりました。自殺でした。両親を姉は愛してましたから、後を追ったんです。」


3ヶ月の間に随分死人が出ている。両親は事故だと言うが…


「ハーピーはいつから現れたんです?」


「姉が亡くなった直後に。自宅の屋敷が、先程の…鳥たちに囲まれて。ハーピーも現れるようになりました。


それで、私と叔父は今、この旅館に避難し暮らしているんです。」


明らかに、何か繋がりがありそうな話だ。しかも直感だが、時子は全てを話していない気がする。


が、俺の仕事はバケモン退治だ。その他は知らねえ。俺は時子にハーピー退治を約束した。

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