第7話 風呂

「わー、これが和室、なのね!畳っていい香りがするわ」


「アンジェラ、有彦、靴は脱ぐんだぞ。あと、アンジェラは隣の部屋だからな?」


「私は同じ部屋に雑魚寝でいいんだけど…」


肩を竦める彼女は、女子の自覚があるのか?

まあ、俺は彼女に手を出すことはないし、有彦は年齢的に言わずもがななんだが。


「取り敢えず風呂に行くか」


汗をかいたのは事実である。荷物を置いて着替えらしい浴衣、タオルなどを持つと部屋を出て。


大浴場は男女別になっているようだ。赤と青の暖簾の前でアンジェラと別れる。


脱衣場で有彦の服を脱がせてやり、手を繋いで広い浴室へ足を踏み入れる。もうもうと立ち込める湯気の向こうには、プールみたいな大きさの湯船、洗い場が見えた。


「ひろーい!」


有彦が歓声をあげる。


「まず身体を洗ってから入るのがマナーだぞ。あと、足元滑りやすいから気を付けてな」


「はーい」


いつもはシャワーなので、椅子に座って身体を洗うだけでも何処か新鮮である。有彦と俺は並んで座った。


タオルに泡をつけていると、有彦がじーと此方を見ており。


「どうした?」


「…静寂お兄ちゃん、大きいね」


彼の視線は俺の股間に注がれている。


「そりゃ大人だからな」


「僕も大人になったら大きくなる?」


「あーなると思うぞ」


適当に答えたら、有彦がびっくりすることを言った。


「大人になって、大きくなったら僕、静寂お兄ちゃんの恋人になれる?」


がたっ!


思わず椅子から滑り落ちそうになる。なんとか体勢を直そうとした所、ガラリと風呂の扉が開く音がして。


「しじまぁー?女湯独りで寂しいからこっち一緒に入っていい?」


湯煙の向こうからアンジェラの声がした。

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