第3話 異変
空港の外には黒塗りのベンツが二台待っていた。運転するのはお付きの黒服のようだ。
依頼人は前の車の助手席に、俺はその後ろ、後部座席に。
有彦とアンジェラは後ろの車に乗り込むよう指示された。
有彦は小さいので、三人で前の車に一緒に乗っても良かったのだが。
空港から離れた車は高速に入る。窓の外を眺めていると、有栖川時子が口を開き。
「懐かしいですか?日本は」
「いや…小さな頃までしか居なかったんで、あんまり。俺にとってはニューヨークが故郷みたいなもんですよ」
「そうですか。でも日本語、お上手ですね」
「世話になった神父から教わりました。彼が指揮する聖歌隊にいたんすよ、俺」
「聖歌隊…ああ、ウィーン少年合唱団みたいな?」
「まあ似たようなもんす。あれ、元は聖歌隊ですから」
バックミラーに映る彼女を見ながら答える。
「……九条さんも、では、小さな頃はあんな綺麗なボーイソプラノで?」
「ええまあ」
質問がおかしかったわけではないが、俺は少し答えにくく、言い淀む。
そこには俺の、思い出したくない過去があるから。
「男性の声変わりって残酷ですわよね。いきなり綺麗な声を奪われて」
なんだか、彼女の声は愉しそうだ。
…胸騒ぎがする。
その時、車の天井に強い衝撃が。ガッという音がし、天井に何かが食い込んだ。
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