第2話 迎え

「やっと着いたわね、あー疲れた!」


アンジェラがのびをする。彼女は小さなショルダーバッグだけを肩にかけているから手ぶらに近い。


俺と言えば、アンジェラ、俺、有彦の着替えと荷物がぎっちり入った二つのトランクを引いてぜいぜい息をしている。


「あ、有彦…独りでどっか行くんじゃねえぞ。迷子になるからな」


「はーい」


注意にそう答えるが、やはりまだ子供だ、初めての場所にそわそわした様子。


「で、依頼人はどこにいるの?」


「んー、飛行機の到着時間は伝えてある。迎えに来てくれるはずなんだが。」


そんな話をしていた所へ、着物姿の女性が近付いてくる。長い黒髪の、若く美しい日本人女性だ。


「すみません、九条さんですか?」


「はい…えっと、もしかして貴女が依頼をくれた…」


「ええ。有栖川です。九条さん、そしてお連れの方々も、わざわざこんな遠方の地まで来て頂き、ありがとうございます。」


彼女は深々と頭を下げる。日本でいうお辞儀、というやつだ。


「いや、仕事とあらばどこでも馳せ参じますよ。ーーエクソシストである俺が必要とあらば、ね。」


「……ええ。貴方の助けが必要です。車を用意してありますから、此方へ。」


彼女の後ろに控えていた黒服にサングラスの男性が、俺のトランクを預かってくれた。おかげで俺は手ぶらである。


すると、有彦が小さな手で俺の手をきゅっと握る。


「大丈夫だ、有彦。今回はお前は大人しくしていてくれ。俺とアンジェラでぱぱっと片付けるから。」


「…うん」


最初は不安そうな顔をしていたが、俺の言葉に、有彦はにっこりと笑った。

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