宵鳴鳥 九条静寂の冒険2

第1話 日本へ

宵鳴鳥


「皆様、ただ今当機は成田空港に到着いたしました。安全のため、飛行機がゲートに到着してシートベルトの着用サインが消えるまでシートベルトを締めたままお席についてお待ちくださいますようお願い申し上げます。


Ladies and gentlemen, welcome to Narita International Airport.


For your safety, we request that you remain seated with your seat belt fastened until we have reached the gate and the Captain has turned off the fasten seatbelt sign.」


機内アナウンスが流れると、飛行機の窓側の席に座っていた有彦が歓声をあげる。


「お兄ちゃん!雲の下に陸が見えるよ?あれが日本なの?」


「そーだ。俺達の故郷だよ。」


小さな窓に張り付いている有彦の興奮が伝わってきた。飛行機に乗るのは初めてなのだろうか。


「静寂は小さな頃は日本に住んでたんでしょ?」


アンジェラの問いに俺は答える。


「ああ。つっても五歳かそのぐらいまでだから、ほとんど記憶はねえけどな。」


「有彦も初めてぽいから、三人とも初めてって感じね。楽しみだわ、日本。何食べようかしら」


ニューヨークを旅立つ前に買ったガイドブックをパラパラめくるアンジェラも愉しそうだ。

が、俺達は遊びで日本に向かっているわけではない。


「おいおい、観光気分もいいけどまず仕事だからな、し・ご・と。」


「ふぁーい」


やる気ない返事をする彼女は、いつもの修道服ではなく、可愛らしいワンピース姿である。

その姿だけなら、おぞましい悪霊と渡り合うプロのエクソシストというより、ただの観光客なんだが。


そろそろ着陸だ。シートベルトを締める。振動と共に、俺達が乗る飛行機は成田に到着した。

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