スタート:1

「おい。日色!起きろよ」


騒がしい喧騒が微睡みに耽っていた耳に刺さり目を覚ます。


「んー?ああすまん寝てたっぽい」


「お前朝っぱらから寝るのかよ」


「まあ眠いときに寝るのが正解って偉い人が言ってたから」


「そうかよ。あ、それよりこれ見たか?」


目の前の男、檜山がおもむろに新聞を取り出し俺の机に叩きつける。


「なんだこりゃ。朝っぱらから市街地で大規模戦闘?しかも未確認魔法粒子が発見される?んなアホな」


世界で2番目に治安のいいと言われるこの帝都で戦闘なんて起こるはずが無いし起きたとして速攻で鎮圧されるだろう。


「俺もそう思ったんだがよ。なんでも隣のクラスのやつが見たって言うんだよ戦闘を」


「マジで?」


「マジ。なんかすっげぇデカいドラゴンとか聞いたことない詠唱とか...面白そうなじゃなね?」


「なんの話してんだ?」


横から腐れ縁の中村が加わる。


「んーなんか檜山がゴシップ記事を見つけて来たんだがよ」


「ゴシップってお前」


「檜山そういうの好きだよなぁ…」


「うるせぇよ。んじゃ放課後確かめに行くか?」


「いいな!いこうぜ」


「そういやセンセー遅くないか?」


言われてみればその通りだ。本当なら既に授業が始まってる時間のはずなのだが。


「おーすまんすまん遅れた。いやー寝坊したわー」


「噂をすればなんとやらってか。んじゃ後でな」


「棚星先生そろそろ寝坊癖治してくださいよ。もう10月ですのよ?」


委員長が割と本気でキレてる。委員長、怒ると本当に蛇が出るんだよな……。


「あー今度から気をつけるわ。んじゃ授業を始めるぞ〜。確か一コマ目は魔法歴史学か」


殺意マシマシの目をサラッと流す先生もやばい。


□□□




「あーまあこんな感じでバカデカい世界大戦が起こってな、んで戦後あまりに疲弊し過ぎて小国は国を維持すら出来なくなって大国に次々吸収されたわけだ。

そんなことが続いて国がアメリカ、イギリス、ロシア帝国、大日本帝国、フランスにアフリカ統一連合、ブラジル、上2つを除いたヨーロッパ連盟に共同傀儡国清と9つにまで減った。実質8つだがな。

これが今の九大国家だ。質問は?」


正直歴史は知っていても知らなくても変わりゃしないだろう。眠い


「ないのか。んじゃ続きだ。まーそんで戦争なんざ皆嫌だからな。金かかるし。九大国家のトップは集まって考えに考えて……。

魔法を表向きは平和のために制限した。それがお前らが習う『世界統一魔法規格』ってやつだ。裏は…まあ想像してくれ」


──世界統一魔法規格。戦後のセーフティとして開発された花をモチーフにした魔法規格。

反戦争の意味から作られた平和の象徴であり攻撃的な魔法は少ない。

また、魔力消費も比較的軽量であり、魔力量による格差問題も起こりにくくなっている。

 『新しい魔法学』より


だそうだ。反戦争の意味って時点で怪しいがそれが裏側に関係してくるのだろう。


「んでまあこの統一規格魔法に関しては∛魔粒子の発見とかでアインシュタインが関わってきたりするんだが……。

おっともう終わりか。10分休憩したら次の授業入るぞ。ほいお疲れ様でした」


「「ありがとうございましたー」」



「なあなあ日色。なんで歴史ってやる必要あるんだ?」


「俺も知りたいわ。んで中村くんや」


「なんじゃい慧くんや」


「あの計画どうなった?」


「あの計画?ああ新しく魔法作るやつだっけ?」


「そうそう。やっぱ統一規格だと消費魔力が多くてな…」


そう、俺の魔力量は平均と比較しても極端に少ない。


「つっても統一規格の時点で消費魔力は抑えてるのにそれでも無理となるとやっぱ不可能なんじゃねぇかなぁ…」


うーんと2人で唸り、悩む。


「諦めるかー」


「そうすっか」


「あ、帰りにアイス食うか」


「駅の方にあったっけか。いいぜ」


「はいはいお前ら早く席に着けー」


「やっべんじゃまた後でな!」


「おう」


「次の授業は魔法学か。んじゃ教科書235ページを……ん?あーお前ら机の下潜れ」


「みーつっけた!死んじゃえ♡」


「は」


何を言ってるのか理解出来ぬ間に




      天井が爆ぜた

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魔に虚ろうは:法か術 トマトと鳩と馴鹿の煮込み物 @Hatomato_0101

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