507話 あんバターサンド







サクラは丸いパンを横半分に切って たっぷりバターを塗ると、さらにそこにあんこをこんもりと乗せた。


「「「ふおおおおっ!!」」」


それを見て白狐達の目がきらきらと輝く。

じゅるりとヨダレも増量中。


「どれ、、」


白狐の中に混ざっていた古竜ラプラスが サクラの作ったあんバターサンドに手を伸ばして来た。


″ペチッ!″


サクラはつまみ食いしようとするラプラスの手をはたく。


「ぬっ?何をする、サクラ」


「働かざる者食うべからず、これは頑張って仕事した白狐達の分だよ」


サクラはそう言って、ラプラスにナイフを差し出す。


「だからラプラスも手伝ってよ。一緒に作ってくれたら分け前をあげるから、パン切って」


牙吉サキチは自分の仕事があるし、白狐達もまだ仕事中だ。


「ふん、パンくらいナイフ無くしても斬れるわ」


ラプラスがちょいっと薄目を開けると、凄まじい魔力が溢れ、ふわりと丸パンが宙に浮く。


″スパパパパパ――――ン!!″


「「「うお――――っ!!」」」


籠一杯のパンが全て一瞬で斬れ、鍋を洗っていた白狐達は拍手喝采。

ラプラスは得意気気分上々。


「……無駄な魔力使い」


「何を言うか、サクラ、パンを潰さず優しく扱い、かつ、均等に分断するには中々の魔力がいるのだぞ!?」


だからそれが無駄遣い。


ジト目を向けるサクラのかわりに白狐達がキラキラとラプラスを羨望の目で見る。


「古竜様凄い!」

「頼もしい!!」

「カッコいい!!」


「まあな」


「はいはい、じゃあ、バターぬってよ ラプラス」


「ふむ、良かろう」


再び魔法を使おうとするラプラスに、サクラがストップをかけた。


「魔法は使わないでぬってごらんよ、楽しいよ?」


何が楽しいものかと思いながらも、ラプラスは渡されたヘラを手にパンにバターをぬっていった。


手にしたパンの断面に、たっぷりとバターをぬると、それだけで美味しそうだ。


(成る程、楽しいかも)


好きなだけ、食べたい分だけ。


そこに ぼってりとあんこも乗せる。


「食べる白狐達の事を思いながら作ってね、ラプラス」


ラプラスはサクラに言われて、おやつが出来上がるまでに仕事を終わらせようと 必死で鍋を磨く白狐達に目を向けた。


頑張る子狐たちのために、、


美味しくな~れ

美味しくな~れ

美味しくな~れ――




お食事パンがおやつパンに早変わり!

山盛りのあんバターサンドに牛乳を添えて。


あんぱんにはやっぱり牛乳が合うよね!




あんバターサンドが完成すると、サクラはシャナに用事があるからと オーガの村に行ってしまった。


ラプラスは 交代でおやつを食べに来る白狐達に混ざって あんバターサンドをご馳走になる。


「「「いただきま~す!!」」」


はむん、と ひとくち口にすれば、しっかりした歯ごたえがありながらも口溶けのよい食事パンに、あんこがからまってなんともバランスがいい。


そこにバターのこってりとしたコクが、ひんやり、ゆっくりと混ざり合い、更に上品な味わいにしてくれる。


粒の残るあんのボリュームはたっぷりで、ほっくりしたあずきと滑らかなペーストが口の中でころがり、からまり、濃厚なバターとの相性は抜群!パンの香りを引き立てる。


バターの塩気とあんの甘味のハーモニー、自分で作った分、食べるまでの期待値が加算され、さらに美味しく感じた。


そして――


″はぐはぐ″

″あむ、むぐ。″

″もぐもぐ″

″むぐむぐ″


口の周りをあんこまみれにしながら 夢中であんバターサンドにかぶりつく白狐達の美味しい顔に、ラプラスは心がほわんとあったかくなる。


「おいひいぃ///」

「古竜様、美味しいね!」

「あま~い///」

「うま~い///」


(サクラが言っていたのはこういうことか)


白狐達を見ながら食べるあんバターサンドは、一層美味しく感じた。


(こんなに嬉しくかんじるとは、手作りした甲斐があったというものだ)


「ところで古竜様、今日は何用で?」


そばがきあん団子を 庭園の茶屋に納品に行っていた牙吉サキチが帰って来て、ラプラスに声をかけた。


「暇潰しだ。ジョーカーを巫女に取られてしまったからな」


「巫女?ヒナの事ですかい?」


「うむ」


おやつをもぐもぐしていた白狐達が ぴくりと耳をしばたかせる。


「ヒナ?」

「ヒナがどうかしたの?古竜様」

「ヒナになんかあったの??」

「ジョーカーって何???」


牙吉サキチとラプラスの話に″ヒナ″が出てきて、白狐達がきょときょとと聞いてきた。


「ジョーカーは 兎の人形に宿った精霊なのだが、これが面白くてな」


「精霊、『つくもがみ』ですかい」


「我に懐いておったのだが(←?) 巫女に護衛が必要との事で、譲ってやったのだ」


「ほう、では、ジョーカーとやらがヒナの従魔に?」


(゜д゜)?←白狐達


「うむ、中々の強さだから 護衛には良いだろう」


Σ( ̄□ ̄)!!!?←白狐達


「さすが古竜様、お優しい、古竜様が認めた者ならヒナも安心ですな」


「「「え″――――――!!?」」」


ラプラスの報告に 全白狐が泣いた――


















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る