501話 500回記念特別編《異世界への扉 4》ー中編ー







「アトス!ポルトス!アラミス!サクラを捕らえよ!!」


「なっ!?なんで!!?」


アトスとポルトスがサクラを両側から捕らえ、アラミスが剣を抜いた。

サクラの目の前に アラミスの剣が下ろされ、ギラリと細身の刃身が光って見える。

斬るというより、本当に、軽く、ぴっ、と首が跳ねとびそうです。


(ひいいいっ)


卵肌婦人は 台座の壇上に備えられた椅子に座ったままで、アトスとポルトスに押さえつけられたサクラを見下ろし、不機嫌そうに言い放った。


「何故一人で来たの?あの方――ラン様は一緒ではないの?」


卵肌婦人は サクラが一人で来たことが気にくわないようだ。


「いや、ランは仕事で、ワンダーランドの本の出来上がりは知らな――」


「問答無用!!」


いやいや、卵肌婦人、あんたが何故って聞いたのよ~


「あの方は約束を破った。アラミス、サクラの首をはねよ」


(えっ!ランのせいで私、首をはねられちゃうの!?)


「待って、ホントに、誤解だから!待って、待って~!!」


理不尽!!

サクラの必死の叫びもむなしく、アラミスがサクラの首の後ろに剣をあてた。

ひやっと冷たい感触に サクラは青ざめ、硬直する。


(あう、あうう、、)


叫びたいのに、ホントに怖い時って声もでないのね。


アトス、ポルトスにガッチリと押さえつけられ、じたばたしてもピクリとも動けない。


サクラの首の後ろから冷たい剣の感触が離れ、アラミスが 剣を振り上げたのがわった。


(ひっ、、南無三!イシルさんっっ!!)


サクラはどうすることも出来ずに、固く目をつぶった――





「待て!アラミス」


サクラが恐怖にのまれ、ビビって声もでないでいると、凛とした男の声が飛んできて アラミスに待ったをかけた。


(助かった!?)


後方入り口から カツカツと靴音を鳴らし、人が入ってきた。

サクラは恐る恐る目を開く。


真っ直ぐな眼差しが印象的な 健全イケメン。


(あの人が止めてくれたの?誰かな?)


「何故止めるの、ダルタニアン」


ダルタニアン!?

剣まで擬人化イケメン化!


(私って一体どんだけイケメン好きなんだ)


「恐れながら奥様、僕はあの男が約束を守ったと ″魔戻りの短剣″より聞いております」


ダルタニアンは正義の剣。

剣同士、魔戻りの短剣とは意思の疎通が出きるって事?

こうなると魔戻りの短剣のビジュアルが気になる。

どんなイケメンなんだろう


魔戻りの短剣は 今、ランの手元にある。

本の外でも擬人化してくれないかな///

ランのそばにいつもイケメンとか、、フフフフ


「あの男は、それはそれは旨そうに ゆで卵を何個も口にしていたとか」


約束ってそれかい!

″きっちり喰ってやる″ってヤツね。


「それは、、本当なの?サクラ」


確かに、食ってた、ゆで卵。

約束だから、と、むしゃむしゃ食ってた。


「はい、ワンダーランドから出た次の日に、ハーフリングの村で、ぽこぽこ何個も食べてました」


「何個も、、それはどんな?」


卵肌婦人が椅子から身をのりだし、ソワソワとした様子でサクラにそのときの様子を尋ねてきた。


「黄身はとろとろ、白身もやわらか沸騰後6分超半熟?

それとも、黄身半生もっちりまったり、白身ぷるんな沸騰後8分かしら?

火が通りすぎてなく、黄身の中央も固まっているけど色鮮やかで、 固ゆで一歩手前な 沸騰後9分?

それ以上の、ホクホク黄身とつるるん白身、弾力一番固ゆで卵?」


細かいですね 卵肌婦人


「えっと、、あれはたしか、煮卵にする前の下ゆでの状態で、、″オレの好きな固さだ″って言っていたから……」


「ラン様の好きな固さとは!?」


「固ゆで手前、だったかな」


「詳しく!!」


食いつき激しい卵肌婦人。


「えっと、オレンジ色の黄身が、″ホックリ″と″まったり″の間くらいの、少しねっとり舌に絡む感じが、味も食感も好きだって」


「ああっ///」


卵肌婦人が顔を赤くして身もだえる。


「白身の、むちゅっ、とやわらかいのに、口の中を滑る感じがたまらないって、、」


「あんっ///」


「それぞれ楽しむのもいいけど、やっぱり少し塩をふって、口の中で黄身と白身が絡み合ったのを味わうのが、最高に――……」


「ああんんっっ///」


あれ?なんか言ってて恥ずかしくなってきたぞ?


「くっ、、」

「あいつ――」

「そんな事を、、」


なんでそんなに悔しそうなんだ アトス、ポルトス、アラミスよ。

卵食べてるだけですよ?


「これでサクラを解放してくれますね?」


ダルタニアンが卵肌婦人に進言し、卵肌婦人は満足そうに″もちろん″と答える。


「ただし、これから出す10の言葉を読めたら、ね。クリア出来たら褒美もあげる」


げっ!小テスト!!


「連続10問題クリアするまで解放しないわよ」


テストではなく クリアするまで帰れま10テンですか!!





サクラはアトス、ポルトス、アラミス、ダルタニアンにしごかれ、なんとか10問連続正解をだすと、ようやく卵肌婦人の館から解放された。


「ダルタニアンさん、助けてくれてありがとうございました」


サクラは卵肌婦人の館の前でダルタニアンにお礼を言う。


「サクラ、次はあの男を連れてきてくれ」


「ランですか?」


「ああ」


「卵肌婦人のために?」


「いいや、僕のために」


ダルタニアンはギリッと奥歯をかみしめ、瞳に闘志のこもった色を浮かべた。


「アイツは僕を否定した、、僕ではなく、″魔戻り″のヤツを選んだんだ」


″正義なんかクソくらえ″て言ってたね。

根にもたれてるよ、ラン。


「僕はアイツと決着をつけなければならない。僕をみとめさせ、、そして、どちらが卵肌婦人にふさわしいかを!!」


メラメラ 瞳に炎がみえますダルタニアン。

暑いです。


「ところで アトスさん、ポルトスさん、アラミスさんは 三位一体ケルベロスじゃなかったんですか?」


「なんだ、サクラは我らが 交わる様子が見たかったのか?」


なんか、言い方卑猥ですね、アトスさん


「絡み合う様子をか?」


ポルトスも!、言い方!


「身体が合体するのを?」


アラミスさんっっ///

いや、これは私の脳内のせいだ。

きっと深い意味はない、、ハズ。


「「我らは三位一体、心はいつも1つだ」」


″one for all, all for one″


「「一人はみんなのために、みんなは一人のために」」


三人が剣を交え、かっこよく決めると、魔女っこ変身シーンの如く光輝き、裸族になりて一つになり、ケルベロスの姿に変身した。


(光って下は良く見えなかったけど、抱き合う様子はご馳走さまです///)


ダルタニアンがサクラの背を押し、ケルベロスの元へ。


「森の家まで彼らが送ってくれるから」


(……これに乗るのか)


あれを見た後で///


サクラはケルベロスに乗ると、七匹の小人が待つ森の家へと送ってもらった。





◇◆◇◆◇





見覚えのある森の家。

本の外のイシルの家と全く同じ家の前に来ると、ケルベロスはサクラをおろして帰っていった。



「待て!サクラ」


家に入ろうとしたところで、サクラはから声をかけられた。


声のした空を見上げると、人化したハチとカナブンが飛んできて、サクラの前に着地した。


「この前はすまなかった、サクラ」


スマートな肢体に薄く透明な羽根を煌めかせた、冷たい感じのするシャープなイケメン蜂さんと、


「ワンダーランドの解放、感謝する」


ガッチリ甲冑勇ましい、男らしく頼もしボディーの筋肉イケメンカナブンさん。


ここも擬人化イケメン化。


サクラを連れ去り、空中で奪い合った挙げ句にポイ捨てしたハチとカナブン。

イケメンコスプレ見れたから良しとしよう、許す。


ハチとカナブンは 謝罪の言葉と共に、サクラの前に贈り物を差し出してきた。


「これは、我らからの詫びの印、受け取ってくれ」

「蟻からせしめた貴重なものだ」


蟻さんから?何だろな?


「但し――」


「「この言葉が読めたらな」」


何ですか!?またですか!


学習プログラムでも入ってるのか、この本は……


















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