201話 【現世】有酸素運動をしない理由







200話を過ぎたので、ここまで読み進めてくださった皆様に、ワタクシの事を少々お話したい。

そんなに面白い話ではありませんし、少し暗い話しになりますので、物語だけを楽しみたい方は読み飛ばしても大丈夫ですよ。

ワタクシが有酸素運動をしない理由ですので、お付き合いいただければ幸いです。


ワタクシは生まれつき心臓がよろしくない。

始めに言ってしまいますが、難病指定されてはいるが、一生気付かず長生きする方もいる病気です。


「難病」という言葉を聞くと、「治りにくい」「重い症状が出る」「寝たきりになってしまう」という悲劇的な印象がありますが、そうではなく、発病の原因が明確でないために治療方法が確立してない、長期の療養を必要とする病気のことなのです。


ワタクシの症状は軽く、発作も入院歴もなく、生活規制もないので、ご安心下さい。

酒はバクバクするのでやめましたが(たまにちょっと飲む)煙草は吸っています。


それがわかったのは、ワタクシが中学1年の5月に父が病気で亡くなった後だった。


父の病気は『肥大型心筋症』

肥大型心筋症とは、心臓の壁が厚くなって、硬くなり、血流が正しく流れなかったり、流れにくくしたりする心疾患です。

心臓は筋肉ですし、ずっと動いてますからね。

衰えることなく心筋は発達します→壁が厚くなる。


なので、心臓に負担をかけず、なるべく穏やかな生活を送るのが一番の治療法とされています。


この病気のは無症状か、わずかな症状を示すだけなので、気づかないことが多いのです。

なので、突然亡くなるケースが多い病気です。

動悸、息切れ、むくみ、悪心 貧血など。

ワタクシも若かりし頃(血の気が多い頃?)は『女の子の日の二日目』になると救急車を呼ぼうか迷うくらい動悸、貧血、胸痛が辛かったです。


父が倒れるまで、母は父の病気を知らなかった。

父はポケットに『求心』を持ち歩いていたようで、自覚はあったのだろう。

当時の医療では治せず、父は発作を起こし余命1年と申告された。

次に発作がおきたら、危ないだろうと。

それでも父は三年 生きた。

入退院を繰り返したが、その三年間が父と一番触れ合った時期だと思う。


父は手先の器用な人で、お見舞いの包み紙で蝶を作り、リボンで金魚を編んだ。


入院中の病室のベッドの壁には、父が折った『蝶』がいくつも飾られていた。

包装紙で作られた『蝶』は、どこも色が様々入り乱れて、とても綺麗だった。

ワタクシも父に教えてもらい『蝶』を折った。


家にいる時は のんびり家事をしていた。

父は海のない土地に生まれたせいか、海が好きで、釣りが好きで、料理も上手かった。


その日、授業中に先生に呼ばた。

父が家で発作を起こし、仕事の合間に立ち寄った母が発見したのだ。


タクシーで病院に行き、笑顔の父と会った。

その日の夜が峠だといわれたが、よくわからなかった。

父の気分が良さそうに見えたからだ。


父の枕元で宿題の国語の本を朗読し 聞いてもらったのを今でも覚えている。

気恥ずかしくて、最後まで読まなかった気がする。

本当に、それが、最後だった。


夜中に慌ただしい声がして、母が父を呼ぶ声が病院の廊下に響き、ドラマみたいだなと思った。

初めて聞いた電気ショックの音。

とても現実味がなかったけど、涙はとまらなかった。

ただただ悲しかった。


亡くなったとき、父の心臓の壁は三センチもあったそうだ。

母は『ご苦労様だったね、頑張ったね』と 繰り返し父に語りかけていた。


この病気は50%の確率で遺伝するという。

貧血の酷かったワタクシは、検査を受け、病気が遺伝している事を知る。

今思えば 父がその事を知らないまま天に召されたことは救いだったな。


病気がわかったワタクシは、体育免除、遅刻しても走るな、と言われ、おとなしく静かな学生生活を送る――――


筈もなく(笑)


だって、自覚症状ないんですもん。

元気もりもり中学生に静かに過ごせとか無理だし。

普通に生活してましたよ。

体育もマラソン大会も運動会もすべて記録係だったけれど。


高校に入ったら、格技場の柔道部のイケメン先輩見たさに同じ場所で練習する剣道部に入る(←無謀)

剣道は体を鍛えるんじゃない!心を鍛えるんだ!(←邪心まみれだったけど)と、母を説得し防具を購入。

主将候補と言われるまでになり(←声がでかかった)

イケメン先輩に彼女ができたのでやめた(←ワタクシの友達がゲット)

剣道は、ちゃんと体調と相談しながらやりました。


なので、ワタクシが有酸素運動をしないのは、病気のせいなのです。

運動しすぎると、寝るときも心臓が静まらずに苦しくなる。


さて、現代に戻りましょう。

二月の半ばごろやっていた運動といえば、食後のちょい運動、腰ふり からだ揺さぶり(←脱水機みたいに体を遠心力をかけて揺さぶる)

背中のストレッチをやめた代わりに 週末は小一時間ほど歩いていた。


ワタクシの病気は、心拍数をあげるのがよろしくない。

歩いて徐々に心拍数をあげ、代謝を良くする分には大丈夫(←神(医者)のお墨付き)

狭く細い川に一度に大量の水を流すと決壊するが、少しずつ量をふやし、川を広げて流れを早くしていく感じかな。


やりすぎてバクバクするのはNG

だから、本当にただ歩くだけ。

だらだらと、散歩するのです。

ウォーキングとは程遠い。


二月に入ってから、夜食べると胃もたれする。

これは胃もたれではなく、心臓のせいなのかなと思っていた。

父が胃が痛いと言っていたら、心臓だったからだ。


神(医者)には勿論 心筋症のことは伝えてある。

エコーも見てもらった。

これ以上進んだら薬を出すと言われている。

薬は正直のみたくない。


脈がおかしいのはいつもの事だし、体重が減ったせいか胃もたれ以外は調子がいい。

階段も坂道も 動悸がしなくなった。

薬をのみたくないので(←子供か)神(医者)に胃もたれのことは言わずにおいた。

またワタクシの悪いクセが出ましたね~先延ばしです(笑)


最後に、病気についてもう一言だけ。

ワタクシの病気は『肥大型心筋症 左心室肥大』

左心室は体全体に血液を送る役割をしている。

ワタクシは心臓が強いのだ。


ワタクシはこの病気のおかげで生きているのかもしれない。

2ヶ月早く生まれたワタクシは、未熟児で、この強い心臓のおかげで 命を繋いだのだ。

父が、ワタクシを 守ってくれたのだと思っている。


だから、感謝しています。

私は貴方の歳を越しましたよ、お父さん。


身の上話にお付き合いいただきありがとうございますm(_ _)m




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