181話 cherry´s始動
次の日、バーガーウルフの仕事が終わると マルクスがサクラを迎えに来た。
「イシルさんに言ってから行かないと……」
「イシル様にはお伝えいたしました」
仕事早いな、マルクスさん!さすがですっ!
遊歩道を通りラ・マリエへと向かう。
ラ・マリエの仲見世通り(仮)露店は今日も賑わいをみせている。
だが、コレじゃ駄目だ……
これではいけない、何故なら――――
「屋台が入ってないじゃないか!」
仲見世通りの醍醐味は食べ歩き!
本場は今は禁止になってしまったようだが、あげまんじゅうを食べながら歩きたいよ。
「アスに提案してみよう」
新たな野望を胸に サクラはラ・マリエへと入る。
「お館様は執務室におられます」
そう言ってマルクスはサクラをラ・マリエの最上階にある アスの仕事部屋へと連れてきた。
ドアをノックして入ると、アスが書き物をしている。
いつもふざけた感じのアスが 真面目な顔して机に向かう姿は新鮮だ。
真剣な顔してれば、フェロモンが抑えられてて眩しくない。う~ん、イケメン
「あ、子ブタちゃん、いらっしゃ~い♪」
顔をあげ、口をひらいたとたん 華やかさが一気に増す。
薔薇の花がひらくように、むせ返るほどの圧が押し寄せてくる。
もう少し静かに眺めていたかった……
アスが席を立ちサクラに歩み寄る。
「仕事はいいの?」
「子ブタちゃんより大事な仕事はないわよ」
「……ソウデスカ」
アスはサクラの目の前に立つと、じっとサクラを見下ろす。
「?」
「昨日、スパに来たんだって?」
「うん、水槽 凄かった!アンモナイトが泳いでるのも初めて見たし、クラゲも癒された~」
「そう、よかった。子ブタちゃんが持ってきた本のおかげよ、ありがとう」
そう言ってサクラにハグをする。
「いや~、役に立ってよかったよ」
アスは そのままサクラに覆い被さるようにして サクラの腰に手をまわし、ゴスロリメイド服の後ろのリボンをほどき、サクラから離れる時に エプロンを抜き取った。
「ん?え?」
たじろぐサクラに微笑みをかえすと、エプロンをぱさっとソファーに投げ落とす。
「何……?」
アスがサクラの首に手を伸ばしてきた。
おかしなアスの行動に サクラが後ろに身を引くと、アスが摘まんだ首のリボンがほどけて、スルリとタイがぬける。
「どうしたの、アス……」
さすがのサクラも警戒する。
逆にアスはウフフと妖しげな笑みをうかべた。
「この日を楽しみにしてたんだから♪」
ニヤリと嗤う。
もしかして、私、ヤバい?
アスの
サクラは扉に走り、外に逃げようとノブを回す。
″ガチャリ″
幸い 鍵はかかっておらず、ドアノブはまわり、扉はすんなりと開いた。
「うわっ!?」
だが、廊下はなかった。
「何コレ……」
そこには深い闇が広がっていた。
地面があるかもあやしい。なんだこれ!?
「危ないでしょ」
サクラの背後からアスが手を伸ばし パタン、と扉が閉められた。
「どういうこと……」
アスは構わず背後からサクラの腰を抱き、まわした手でスカートのホックを外す。
「うわっ!」
サクラはアスの手から力任せに逃れると、スカートを押えながらソファーの反対へと逃げた。
「うふ、抵抗されるの久しぶり♪」
「何言ってんの!?」
「だって、誘うと皆すぐ脱いじゃうんだもん」
「″だもん″じゃないよ!可愛く言ったってダメだからね!」
「だめ?」
「だ・めっ!!」
ソファーを挟んで鬼ごっこだ。
「イシルが子ブタちゃんの部屋に余計なことしたから
ジリジリとアスがにじり寄る。
「仕事場で
「イヤイヤイヤイヤ!何をだよ!?」
アスは狩を楽しむ猫のように サクラを窓辺へと追い詰める。
サクラはカーテンを開け、外を見た。窓の外も闇だ。
「周りとは
ああ、イシルさんのチェックしてくれた部屋でアスに会っていればこんなことにはならなかったのに!
己の危機管理能力の無さが恨めしいっ!
窓に張りつき、振り返ったサクラのブラウスのボタンにアスの手がかかる。
サクラはそれを払おうとして スカートから手を放してしまった。
「うわっ!」
あらわになった脚を慌ててカーテンで隠す。
「助けは来ないのよ」
その間に ぷつん、ぷつんと アスが手慣れた様子でブラウスのボタンを外した。
「わー!アス、まって!!」
「観念しなさい」
アスが紐を手にカーテンを掻き分ける。
「その
アスがニヤリと嗤い、カーテンに身を隠すサクラに密着すると、ブラウスを剥ぎ取った。
「スベスベ……背中、キレイね」
「ひっ///」
するりとサクラの背中を撫でると、窓とアスに挟まれて身動きのとれないサクラの身体に紐を巻き付けた。
「いやっ///」
その紐は――――
紐……
紐に、メモリ?
「全身、測るわよ」
紐じゃなく、メジャー?
「それでも嫌じゃ――――!!!」
サクラが暴れる。
「チェリッシュのプロモーションのために 口紅に似合うドレス作るんだからじっとしてよ~」
「協力するとは言ったけど、プロモーションのモデルやるなんて言ってないし!この体型で無理でしょ!?もっと綺麗な人使いなよ!」
サクラはカーテンにぐるぐるくるまる。
ミノムシみたいに。
「その体型だからいいのよ。言ったでしょ、金まわりがいいのは子ブタちゃんくらいの年齢層だって。
一昨日はそのために大ホールに連れて行ったのか!
アスといれば自然と目を引く。
月とすっぽん、ブタに真珠、サクラにアス!!
昨日はランともイシルともいたからさんざん注目浴びてたよ。
うわ~やられた!アスの思うつぼだったんだ~
「やめる!やめる!手伝いやめるぅぅ~」
「何言ってんの、昨日前借りしてお金使ったでしょ?」
ああ、ぬいぐるみを買ってしまったんだった。
「返しますよ!お金」
「利子つけるわ」
「いくらでも払うから!」
「100万倍?」
「払えるかっ!!」
「でしょ、」
カーテンにくるまるサクラをアスがひんむいた。
「ぎゃ――――!!!」
◇◆◇◆◇
「ふむ、手首足首は細いのね。首から背中にかけては使えそう……ウエストは締めるとして、足は隠すか」
アスがメジャーをしまいながら 呟く。
くっ、、屈辱、、カップまで測られた……
「服を、返してよ」
サクラは再びカーテンにミノムシだ。
「そのままドレスを着せるから これつけて。
アスはビスチェをサクラに渡すと、薄いピンク色の生地を広げて裁断する。
「……そんな淡い色 太って見えるんじゃない?」
カーテンの陰でビスチェを装着しながら サクラがアスに問う。
サクラは着やせして見えるよう、いつもダーク系のカラーばかり選んでしまう。
しかもピンクは鬼門……
「この色はピンクに少し青みが入ってるでしょ?青の締め色効果があるわ。すっきり透明感があるこの色は きっと子ブタちゃんの白い肌を引き立たせてくれるわよ」
アスは裁断した布を魔法で縫い合わせながら 楽しそうに笑った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます