174話 焦がしマヨたまトースト







「古代竜、エンシェントドラゴンですね」


朝食は目玉焼きトーストです。

今日のパンは珍しく固くない食パンを使ったトースト。

そのかわり、全粒粉の食パンで糖質オフ!

材料は食パン、卵、マヨネーズだけでもOK

卵は常温のものを使うことをオススメします。


先ずは片面を軽く焼き、焼けたら反対の面にバターを塗る。

真ん中に卵を割りいれるので、パンの周りをマヨネーズで四角く囲う。

卵が流れ落ちないようを作るのだ。


ここで注意なのは、パンは焼くとしまうので 真ん中が高くなる。マヨネーズは遠慮なく高く盛っていただきたい!

マヨラーサクラは言われなくてもマヨネーズこんもり。


″パカッ″


真ん中に割り入れた卵の黄身、ぽよんと目玉がこっち見てる!うふふ。


「黄身は潰してくださいね」


「えっ!」


「焼けにくいので」


「……はい」


ちょっと勿体ない気もするが、時短のためだ。


″ぷつん″


箸で黄身に穴を空け少し広げる。

塩、コショウをパラパラと。


その上にアルミをかけて弱火でコンロの真ん中にあるグリルで焼くのだが、マヨネーズがくっつかないようふんわりのせてくださいな。


卵の焼け加減を見ながら大体8分~10分程で出来上がり。

アルミかけていてもこんがりマヨになりますが、最後に好みの焼き目をつけるとなおよいです。


「エンシェントドラゴン、古代竜は 世界創生と等しい寿命を持つと言われています」


パンが焼ける間、イシルはスープをつくり、サクラはサラダ用にレタスをちぎる。


「″我はこの星と共に生まれ、この星を見届けるのが我の役割なのだ。我は古き時より この星を記憶する者なのだ″って言ってましたよ」


「なんですか、それは……エンシェントドラゴンの真似ですか」


無理矢理低い声でエンシェントドラゴンの言い方を真似るサクラにイシルがクスリと笑みを見せた。


「くあ~、エンシェントドラゴンだって?」


そうこうしているうちにランが欠伸をしながら降りてきた。


「伝説のドラゴンだろ?見たヤツなんていないっていう」


「えっ!そうなの?」


もしかしてイシルさんの寝顔よりレアだったのかな?


「ホントに存在してたんだな~」


イシルとサクラが料理を皿によそい、ランが食卓に運ぶ。

席に着き、いただきますと朝食開始。

毎朝の何気ない光景。


「イシルは見たことあんのかよ」


「ありませんね。ウワサだけです。眠り竜の異名どおり、ずっと眠っていて、その眠りを妨げるものは生きて帰れないと」


うわっ、もしや私 死ぬとこだったの!?


「あ、ランディア、パンは熱いので冷めてから食べなさい」


「あうっ」


パンにかじりつこうとしていたランは パンを置き サラダのチキンにかぶりつく。


今日のサラダはレタスとサラダチキン。

ランのはチキン多めである。

サラダチキンはマジックソルトとオリーブオイルづけにしてあるのでドレッシングいらず。

鶏肉に味付けしてジップロックに入れ、オリーブオイルづけにする。袋ごと茹でるだけで、ヘルシーでしっとり美味しいサラダのお供になってしまう。


サクラはパンにかじりつく。

焦がしマヨたまトースト。

マヨネーズのつんとしたにおいと美味しそうに焦げた見た目が食欲をそそる。

アルミホイルでくるんだまま、がぶりと。


「ザクッ、はふっ」


熱い!でも美味しい!

さっくり焼けたパンの香ばしさとマヨネーズの酸味、そこにぷるんと白身のつるつるした淡白な味わい。


「んふっ///」


アルミを広げてもう一口


「あぐっ、むぐっ」


トロッと濃厚な黄身が流れ落ちる。

黄身をつぶしたので、流れすぎない固さだ。

半熟具合が素晴らしい!

そして、目玉焼き後乗せでは感じられないパンと卵の一体感!

そこに バターがしっとり香りづけ。


「うはは」


シンプルなのに思わず笑っちゃうくらい美味しい。

黒コショウのアクセントもきいている。

アルミで包んでいるから こぼれないで食べやすい。

卵もはがれない。

ラ◯ュタのパズーに教えてあげたいよ。


このマヨネーズのはアレンジがきく。

ツナマヨ、コーンマヨ、チーズマヨ、ニンニクマヨ……

ひと手間加えるだけで簡単アレンジ!

逆に、の中に入れるものを代えてもいい。

流れやすい前の日カレールや、生クリームとベーコンを足してカルボナーラ風とか。

進化系オープンサイド!


スープはトマトと玉ねぎのコンソメ、そして……


「タコさんウインナーがはいってる」


イシルがちょっと気恥ずかしそうにはにかんだ。

気に入ってるんだ、タコさんウインナー……


「エンシェントドラゴンの髭なんて、一本でもかなりの値段で売れるんじゃないか?」


ランもようやくパンにかじりつく。

うん、いい顔だ。


「あれ?」


「どうかしましたか、サクラさん」


「夢の中から持ってこられたってことは……」


「……なんですか?」


イシルは なにやら嫌な予感がした。


「夢の中にも持っていけるってことですよね?」


「なに言い出すんだよサクラ」


ランも呆れ顔だ。

夢の中に物を持ち込もうと考える者などいない。


「ハサミでも持ってって髪を切ってくんのか?大金持ちになれるぞ」


ランがサクラの言葉を茶化す。

イシルは相変わらず浮かない顔だ。


「一体何を持って夢の中に行きたいっていうんですか」


「コロッケです」


「「コロッケ?」」


「はい、昨日ラプンツェル……ドラゴンさんと一緒にドワーフ村に来たんですけど、ギルロスさんが夜食でコロッケサンド食べてて」


「ああ、ギルロス夜警だったな」


「ドラゴンさんが、コロッケ食べてみたいと……」


「ドラゴンが、コロッケを?」


サクラは昨夜の話を二人に聞かせる。

『千里眼』を持つドラゴンの話を。

人々を見つめ続け、多くの人の中にあって孤独であることを。

そのドラゴンがぽつりとこぼした言葉


″我も食してみたいものだ……″


「じゃあ、夢魔に頼ってみればいいんじゃねぇか?」


「むま?」


「夢を操る悪魔だよ。に頼めば紹介してもらえるだろ?」


……アスのことだ。

アスは仕事以外で頼み事をすると 見返りを要求してくる。

う~ん……


「確かに 夢魔は夢を操れますが、物を持って入れるわけではありません。をみせてはくれるでしょうが、味のわからない悪魔にコロッケの再現は難しいでしょうね」


「そうですか……」


「僕も何か考えてみますよ」


「すみません、ありがとうございます」


なんだかんだ言ってイシルは人をほっとけないんだ。

、感覚が同じ人って、やっぱいいいなぁ……


そんなことを しみじみ思う。


朝食を終え、片付けをすませると サクラは出かける準備のために部屋に戻った。

今日はランが何処かへ連れていってくれるらしい。


「まさか意識体で抜け出すなんて……結界を強化しなくてはいけませんね」


サクラが抜け出してもわかるように。

村のほうにも の魔物の対策をしておかなくては。


「そんなに警戒しなくてもいいんじゃねぇか?夢なんだし」


リビングでイシルと一緒にサクラを待っているランが イシルの一人言に返した。


「ドラゴンは雄でしたよ」


「え?」


「あの様子ではサクラさんはエンシェントドラゴンに気に入られたようですね。君さえいなければ従魔になれる」


「ドラゴンが従魔になんかなるかよ」


「気づきませんでしたか?サクラさんはドラゴンの名前を呼びかけたこと。名前をつけたのか、教えてもらったのか……」


「オレは契約解除する気はねぇ!」


「ドラゴンにかかれば君は一捻りでしょう?とってかわるなんて簡単ですね」


「ぐっ、、怖いこと言うなよ……」


「どうしたの?ラン」


サクラが降りてきてランに声をかけた


「サクラは オレのこと 棄てたりしないよね……」


「???」




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