141話 おかえりアイリーン
「リベラさん、かっこよかったよねー」
「リベラさんはぁ、いつもあんなかんじなのぉ?ヒナ」
「はい、いつも……守ってくれます///」
サクラが帰り支度をして表にでると、リズとスノーとヒナが リベラの話をしていた。
「サクラもそう思うでしょ?」
リズがサクラに話をふる。
「そうだね、男の人がやるとキザっぽいかもだけど、リベラさんは かっこよかったよね」
「「消毒!!」」
キャーっ!とリズとスノーがはしゃぎ出す。
「私見惚れちゃったもん」
「「わかりますー!」」
ととと、と ヒナがサクラに近づいてきた。
オーガ族の私服は和のテイストがあり、和洋がまざったミニスカートの着物みたいだ。
「あの、サクラさんは、イシルさんとお付き合いされてるのではないのですか?」
「へ?」
なんで突然そんなことを聞く!?ヒナよ。
「お付き合い、して……ません」
「でも、好きなんですよね?」
おとなしいヒナが 珍しくグイグイくるな。
ヒナ、もしかして イシルさんのこと……
「好き ですか?」
上目使いでふるふる震えながらみつめるチワワのような瞳。
そんな純粋な瞳でうるうる見つめられたら嘘がつけないじゃないか!
なんて答えれば……
「わっ、わたしはイシルさんに似合わないから」
「ばっかじゃないの」
後ろからアイリーンの声がとんできた。
「アイリーン!?」
「あんた、まだそんなこと言ってんの」
「まだもなにも……」
「そんなこと言ってると、いつかどっかの女に横からかっさらわれちゃうわよ」
いや、それが望みではあるんだよね、不本意ながら。
「アイリーン、あざみ野に帰ったんじゃなかったの?」
「行って帰ってきたのよ。向こうを昼に出たら思ったより早くかえってこれちゃったの」
スターウルフって、そんなに優秀なの?
アイリーンはお土産らしき紙袋をみんなに配ってる。
やっぱりええ子やなぁ~
「何ニヤニヤしてんのよ、あたしにドSエルフの相手させやがって……」
アイリーンは お土産の紙袋をサクラに押し付けると サクラの両頬をむぎゅっと掴む。
「ひゅ、ひゅいまひぇん」
ドSエルフって、イシルさんのこと?
「あんたが、そんなだから――……」
アイリーンの手がとまり、サクラの後ろを睨む。
「ろうひたの、アイリーン」
「サクラ、かえろーぜ」
ランが迎えにきた。
アイリーンがサクラを解放する。
アイリーンはランを睨んだのか。なんで?
「今日はもういいの?警備隊は」
「今日はこの後サクラの護衛だから」
(これは、ギルロスさんを丸め込んで帰ってきたな)
そんなランの体のいい言いぐさにトゲのある声がかかる。
「うわぁ、警備隊って大変ですねぇ、
アイリーンがハイトーンボイスで。ちくちく。
明らかに小馬鹿にした物言いで、含みがある。
ランがとてもキレイな笑顔でそれに答える。
「なんだ、もう
いやいや、困るよ?アイリーンいないと。
てか、ラン、アイリーンに冷たいよね?
女の子全般に優しいのかと思ってたよ。
「アタシはあんたより随分役に立ってると思うけど?ろくに仕事もしないでサクラの周りをウロチョロまとわりついてうっとおしいったらありゃしない」
臨戦態勢に入ったアイリーンに対し、ランはカウンターに肘をついて、顔をのっけながら、涼しい笑顔をアイリーンにむける。
窓辺か?ここは。
「いやだなー、オレの事うっとうしいと思うくらい気にしてくれてるんだったら そう言ってくれればいいのに いつでも相手してやるぜ?」
ランの
イタイ、イタイよ、隣にいると。
それにしても二人とも口がよくまわるなぁ。
「金もない、仕事もしない、顔だけの男なんて、私には養うだけの財力がないんです、残念ながら」
「だよねー、オレも。裏表の激しい、金目当ての、顔だけの女なんてオレには勿体ないねー」
「チンケな宿無し軽薄
「自己中肉食
「…………」
「…………」
ギリギリと笑顔で睨み会うランとアイリーン
「帰ろーぜ、サクラ」
ランが
……返事がない。
「サクラ?」
振り向くと、サクラの姿がない。
ランは リズとスノーに問う。
「サクラは?」
「さっきイシルさんが来て」
「肩を抱いて連れて行きましたよぅ」
「あんのクソジジイ……」
ランは急いで追いかけた。
背後で高笑うアイリーンの声を聞きながら……
◇◆◇◆◇
肩にまわされた手があまりにさりげなさすぎて、突っ込みどころがわからない。
サクラは チラッとイシルを見上げる。
『ん?』と、イシルが目でサクラに問う『どうかしましたか』と。
この
自分にむけられる 目だけで
そして何も言えなくなる。これが惚れた弱み。
「ランは前からアイリーンと仲悪かったでしたっけ」
イシルはサクラの問いに思い当たる節があるようで、ああ、と、小さく呟く。
「似た者同士ですからね」
あまり接点はないが、ローズの町から帰ってきたあたらりから、目に見えて威嚇しあってるそうだ。そういえばキャラかぶってんな。
「鏡を見ているようで嫌なんでしょう」
幼い頃から生きるために人を騙し娼館をわたり歩いてきたランと孤児院で男の子の格好をして 人を欺きながらわたってきたアイリーン。
お互いに自分の嫌な部分を相手にみてしまう。
その存在が 自分を責める。
「イシルさんは自分がもう一人いたらどうですか?」
「絶対嫌です」
おっ、即答だな。
しかも、本当に嫌そう。
おかしくて、サクラはもう少しつついてみる。
「便利じゃないですか?」
「自分の性格の悪さは自分が一番わかってますから」
これはアイリーンが言ってたドSと関係が?
「それに……」
「それに?」
「僕がもう一人いたら サクラさんを取り合うことになるでしょう?」
「ぐはっ///」
そうきたか!今日はそういう攻撃か!!
よし、受けて立とうぞ。
「私も二人いればいいんじゃないですか?」
ひきつる。顔がひきつるよ。
「サクラさんが二人いたら二人とも僕がもらい受けます」
「うぐっ///」
「二人とも平等に愛しますよ」
「も、もういいです」
「サクラさんは自分がもう一人欲しいですか?」
「……いりません」
自分に嫉妬してしまうわ!
勝てる気がしない。
今日も負け負けだ。
くすくすとイシルが笑い、サクラの肩にまわした手に 少し力を加え、軽く引き寄せる。
「一人で、十分です」
だから、もういいってば///
「……歩きにくいです、イシルさん」
「すみません」
うん。でも放してはくれないのね。
「そういえば、ラルゴくんが相談があるみたいです」
「私にですか?」
「ええ、ピューラーの販売目処がたったので、明後日からアジサイ町に行くんですが、販売するにあたり、何か助言がほしいそうです」
「助言、ですか……」
私になにかできるかな?
サクラとイシルは歩きにくいまま組合会館へと到着した。
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