139話 【現世】ポテチが食べたいんです
それは 正月あけに友人と喫茶店でお茶をしている時だった。
″何をそんなにイライラしてるの?″
自分ではまったく気がついていなかったが、私はどうやら友人の話に全て否定的だったようだ。
「別にイライラなんかしてないよ」
ここで、さらに否定するわけですよ。
認めませんよ、自分では気づいてないんですから。
それで、言い合いになったんです。
″そこまで意固地にならなくてもいいじゃない″
「意固地になんか、なって、ないもん」
じわっと、目頭が熱くなった。
″無理してるんじゃない?″
「無理なんか、してない!」
なんだかしらないけど、私の目からポロポロと涙が出た。
泣く気なんかまったくないのに、
悲しくなんかないのに、
涙がとまらないんですよ。
「ポテチが、食べたい――――」
私、そう言って号泣。
友人がびっくりする。自分もびっくりです。
なんの脈絡もなく その言葉が出てきたんですよ、勝手に。
いい年をしたオトナがポテチが食べたいと、喫茶店で声を殺して大泣きです。
″つらかったんだね、食べる?″
友人は 自分が注文したプリンを スプーンですくって私の口に入れた。
生クリームたっぷりのせて、ふるふると甘いカスタードプリン。
手作りで、ちょっと固めの昔ながらの懐かしいプリンの味。
ちょい苦のカラメルソースがカラメルの甘さを引き立て生クリームが贅沢な気持ちにさせてくれる。
″頑張ってる、よくやってる″
友人が もう一匙 私に向けたが、私は首を横にふって拒否した。
落ち着いてきた私に 友人が言う。
″ポテチ、買って帰ろうね″
私は コクリと 頷いた。
私は知らないうちに自分を追い詰めていたようだ。
あれはの心のSOSだったんだ。
はじめはゆるゆるでやっていた糖質制限も、いつのまにか私の中で義務に変わっていた。
義務になると「やらなくちゃいけない」になってしまう。
義務から習慣に変わるのは時間がかかる。
この「やらなくちゃいけない」と、順調に減ってきた体重をリバウンドさせたくない思いから 強迫観念が生まれ、自分を縛りつけ、追い詰めた。
おからクッキーやチョコレートだけでは 私の味覚は満足してくれなかったらしい(笑)
米への未練はそんなにないが、菓子への執着はマンモス級。
友人は 以前の私の食生活を知っていた(ほぼ毎日スナック菓子を食べていた)ので、ストイックに間食を避ける私を心配してくれていたんですね。
このときの ひとくちのプリンが、私の中のルールを破壊して、″食べない″という連鎖を絶ち切り″たまには食べてもいい″に 書き換えてくれましたよ。
一度破られたルールは破りやすいのです。
私はいつでも食べられるように 小袋のポテチを 一つだけ常備している。
お守りのように 未だに封は開いていませんがね。
禁酒や禁煙もそうですが、習慣になってしまっているものを止めるときは、精神のバランスをとることが必要になってくる。
だから中には ストレスになるくらいなら禁煙しなくてもいいという神(医者)もいる。(あくまで個人の意見です)
糖質制限中の診察の時にも必ず言われます。
″決して無理はしないで″と。
私はこの日から 食べたいときはひとくちだけもらうようになりましたよ。脳を満足させてあげます。友人も安心するし。
物語の中で アスがサクラにあげるひとくち。
皆様にとって、
天使のひとくちとなるか
悪魔のひとくちとなるか
うまく付き合って、バランスをとりながら 手玉にとってまいりましょう!
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