85話 ラルゴパーティー
サクラとイシルが ワインセラーで
甘々な時間を過ごしている頃――――
ランは布団の中にいた。
昨日は久しぶりに酒をたらふく飲んだ。
気持ちよく、ベッドで丸くなる。
近くにあった人肌に すり寄る。
やっぱり人肌は心地好い。
がしっ、と 首を抱かれ、引き寄せられる。
随分と大胆で 力強いな。
…………硬い
……筋肉質でゴツゴツしている。
娼館じゃないのか?
昨日は何処で飲んでたっけ?
サクラと飲んでて……
サクラはもっと ぽよぽよしてるハズ
ランは ぼんやり目をあける。
「……え?」
燃えるような赤い髪が見える。
「うわ――――っ!!」
ランの叫びが銀狼亭に響きわたる。
「……起きたね」
「ギル、放せよ!!」
ギルロスは目を覚ますと、ふあーっ、と、あくびをする。
「放せって!お前、何で服着てねぇんだよ!?」
ギルロスは上半身裸だった。
「んあ?寝るときはそんなもんだろ」
ギルロスは 再び微睡みに入る。
「オレを枕にするな――――!!」
◇◆◇◆◇
時は二日遡り――――
ラルゴは ドワーフのフンギと 町の商人ギルドへ納品と挨拶にやって来た。
今までは 他の商人達と組で 冒険者を雇い 町を渡り歩いていたが、ドワーフは戦士なので、冒険者の護衛はなしだ。
気が楽でいい。
今回、商人ギルドへの納品では驚いた。
ドワーフたちは言い値で取引していたらしく、かなり安く買われていたのだ。
ラルゴは持ち前の気安さと、調子のよさと、コロッケを駆使して商談を大成功に納めたのだ。
フンギが驚くほどに。
フンギには、イシルにちゃんと自分の勇姿を語ってくれよと、念押しし、只今帰路についたところだ。
納品物がない分 帰りは荷馬車が軽い。
頑張れば 帰りは二日かからないかもしれない。
ラルゴは はやる気持ちで 手綱を握る。
(ん?)
町を出て 暫くすると、ピンク色の髪のセミロングの女の子が手を挙げていた。
(ヒッチハイクか?)
女の子は 御者席のラルゴに 上目遣いで話しかける。
「次の町まで行きたいんです。乗せてもらえませんか?」
人間の女の子だ。
大きな瞳をうるうるさせてラルゴに訴える。
「ドワーフの村までしか行かないけど」
「そこまででいいです」
子犬を思わせる清純な瞳。
小首をかしげて モジモジとお願いする姿はなんとも可愛らしい。
人間の女の子一人でこんなとこに置き去りにするのは危なすぎる!人として捨て置けないだろ!人助けだ!!
と、ラルゴは都合良く自分に言い聞かせる。
「いいですかね、フンギさん」
「構わんよ~」
女の子は お礼を言うと、荷台ではなく、ラルゴの隣に座った。
「アイリーンです」
ニコニコ笑って アイリーンがラルゴに話しかける。
「ラルゴさんは、村の組合長なんですよね?」
なんで知ってる?
「さっき、町で……」
ああ、そうか、町で営業している時に聞いたのか。
「偉いんですね~」
「いや~///」
お世辞だとわかっていても嬉しいもんだ。
ラルゴはすっとぼけていても商人だ。
ある程度人を見る目はある。
アイリーンは ラルゴを値踏みしている……
「凄いです」
アイリーンがラルゴに近づく。
小首をかしげて 一番可愛い角度でラルゴを見つめる。
清楚な風貌で 小悪魔的なにおいのする女……
嫌いじゃない。
大丈夫。財布を持ってるのはオレじゃない。
デレても大丈夫!!
「コロッケ、食べる?」
ラルゴはアイリーンにコロッケをパンに挟んで渡す。
自分の昼の分だが、もう一個ある。
「町で配ってたコロッケですね!美味しい~」
食べる姿も可愛いな。
小さな口で もぐもぐタイム。
ラルゴはサクラを思い出す。
サクラはもっと 豪快でとても美味しそうに食べるんだ。
思わず見惚れてしまう程に……
ラルゴはデレデレとアイリーンとの会話を楽しむ。
決して浮気ではないです、イシルさん!
また暫くすると 茶髪に金メッシュの長い
ラルゴは 荷馬車を止め、女の子に駆け寄る。
「大丈夫ですか?」
「うぅっ……」
頭に角がある。鬼の
たしか、ドワーフの村の次が鬼の村、オーガの村だった。そこの
「腹……減った」
どうやら空腹で動けないようだ。
仕方がないので、ボックスからコロッケをだして パンにはさんであげると、喜んで食べていた。
さらば オレの昼飯よ。
「リベラだ。護衛するから、のっけてってよ」
やはりオーガの村の
冒険者で、里帰りの途中だったと。
乗っけてあげたのは けっしてその剣士のビキニに惑わされたからではない!
巨乳だったからではない!親切心からだ!
鼻からの流血を押さえつつ、ラルゴはフンギと御者をかわる。
フンギが自分の分のコロッケを一つわけてくれたよ、ありがとう。
次の村まで ばいんばいんの ウハウハで両手に花の 鼻の下伸び放題だったことは 内緒にしておこう。
イシルさん、浮気では、ない、です。ぐふっ///
リベラが護衛を受けてくれたので、次の村では夜営をした。
余計な金を使わないで済んだ。
ドワーフの村の一つ手前は ハーフリングの村だ。
ハーフリングは 成人しても人間の子供の背丈しかない。
魔法はあまり得意ではないが、手先が器用で、鍵や罠の解除が得意な種族だ。
ダンジョンにもぐるパーティーにいると重宝される。
「ラルゴはん、コロッケ、もうないんでっか?」
独特の喋り方をする種族。
そして、次の日。昼頃村の裏手の道に入ったら、またしても女の子が……
緑色の長い髪の女が 木の下に寄りかかり、突っ伏していた。
どうやら、魔力切れを起こしているようだ。
かなり衰弱している。
ラルゴは、女の華奢な腕を掴み、立ち上がらせる。
よろりとよろけて 女がラルゴにしなだれかかる。
ラルゴでも抱えられそうな程線が細く、それでいて出るところは出ている 美しいラインの女。ぐわ~!くらくらする。
ピンクの髪のアイリーンが、少し治癒魔法がつかえるというので、魔力切れの女に回復をかけてもらう。
自力で立てるほどには回復したので、村に連れ帰り、治療してもらおう。
決して美人に目がくらんだ訳ではない!
スリットから覗く脚に魅せられたわけではない!
人命救助だ!!浮気ではない!男の本能だ!!
「シャナと呼んでください」
シャナは四日前 ディコトムスに襲われ、魔力を回復しながら 助けを求めに ドワーフの村を目指していたという。
四日前……ラルゴが町に出発した日だ。こんなところにディコトムスが?ラルゴは遭遇しなかった。危機一髪だ。
シャナは薬師で、パーティーを組んで旅していたが、仲間は皆 ディコトムスにやられてしまったそうだ。
緑の髪をしているということは、風魔法の使い手なのだろう。
こうして、ラルゴは美少女を従え ドワーフの村に帰還した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます