81話 酒は飲んでも飲まれるな(ラム酒・赤ワイン)
イシルは亜空間ボックスから ショットグラスと 酒を取り出した。
琥珀色の綺麗な液体が注がれる。
「乾杯しましょう」
甘い香りと深い風味……ラムだ。
ラム酒の香りの良さに騙されてはイケナイ……
高い度数のものでは 80を越える。
映画でも良く見る カリブ海域の海賊共がラッパのみして ラリホーしている
テキーラも目じゃないぜ!
「歓迎しますよ、
カチン、とグラスを合わせると、イシルとギルロスはショットグラスをあおる。
「!!」
まろやかで口当たりのいい酒。
とろみを口で燻らせると 芳醇な香り。
そして、焼けるような喉越し。
「なんだ!これは」
「いい酒でしょう?」
イシルが二杯目を注ぐ。
「いいのか?こんないい酒」
「ええ、一人で呑んでもつまらないので」
カチンと音を鳴らして ラムをあおる。
ギルロスの顔が上気し、赤く色づいている。
機嫌はすこぶるいいが……
「ギルロスさん、程々に……」
サクラが心配して ギルロスに声をかける。
この手の飲み方は突然おちる。
膝から、ガクンと。
決して 真似することなかれ……
飲み慣れない酒には用心すべし。
酒には強いからと
己の肝臓を大切にしましょう。
それにしても、酔ったギルロスは色っぽいなぁ……
声もさらに
ちょっと霞がかって、ハスキーに……
「何ニヤニヤしてるんですか?サクラさん」
「……いえ」
イシルはあまり変わらない。残念。
結局、サクラが止めるのも聞かず、ギルロスは潰れるまで飲み続けた。
◇◆◇◆◇
「朝起きたら一緒のベッドって……びっくりするだろうな」
サクラは ランとギルロスが 狭いベッドに突っ伏していた場面を思いだし、くふふと笑う。
「いいもの見た♪」
家へ帰って風呂に入り、さっぱりして出てきたら リビングで イシルがワイングラスを用意していた。
「もう一杯だけ 付き合ってくれませんか?」
赤ワインだ。
「ゆっくり飲みたくて」
ボルドーグラスに控え目にワインを注ぐ。
サクラは制限しているから、テイスティング程度に。
ワインを注ぐ姿も様になってますね!イシルさん。
ソムリエですか!?
「どうぞ」
濃い赤紫の液体。
サクラはグラスを受けとると 3回ほどまわす。
ワインが空気に触れ、ふわっと花開く。
グラスに口を近づけると、底の広いボルドーグラスの中に 香りが立っていた。
華やかな、深く、重い香り。
香りを楽しみつつ 口をつけ、ワイングラスを傾ける。
薄いグラスは 酒本来の味をダイレクトに感じさせてくれる。
舌に触れるグラスは、薄いほど口元に神経が集中し、ワインの複雑な風味を敏感に伝える。
″クッ……″
一口。口に流し込む
すうっ、と、舌に広がる。
重たい渋みのあとに、ふわっと華やかさが広がった。
″ゴクン″
飲みこむと、さらに コクのある濃厚な香りに満たされた。
芳醇な空気に包まれる。
深紅のビロードにくるまれているようで、うっとりする。
「はあっ///ふぅ」
心地よい 陶酔……
その波に身を任せ……
余韻に 浸る。
「……っ、なんて顔するんですかっ///」
「え?」
「ワインに嫉妬してしまいそうです」
イシルの顔が赤い。
ラムでは変わらなかったのに、ワインで酔ったのか?
「外では飲酒禁止ですね」
なんでだよ……
明日ワイン見に行くのに。
もう一口。
″くんっ″
「んんっ///」
ああ、濃厚な赤ワインだ。
時間と共に 味も、香りも変化が楽しめる。
「参ったな……」
イシルはワイングラスを片手に 複雑な顔で
ワインと戯れるサクラに しばらく 魅せられていた。
「どうしてわかったんですか?ギルロスが潰れると」
イシルがサクラに質問する。
「お酒の失敗は沢山してますからね」
「意外ですね」
「人の失敗も沢山見ましたし。イシルさん、潰す気満々でしたよね ギルロスさんのこと」
「バレてましたか」
経験者です。わかります。反省してます。
潰しちゃった人 ごめんなさい。
今ならわかる。危ないから、やめましょう。
「何でまたそんな事」
「わかりませんか?」
理由?新入生歓迎?洗礼?かわいかったから?
「明日はサクラさんと二人で出かけたかったんです」
「え?」
「ギルロスとランディアは明日の昼まで起きません。あの様子では」
計画通りですか!?イシルさん。
「ちょっと、大人げなかったですね……すみません」
イシルが少しやり過ぎたと反省してる。
可愛いな、おい。
実はイシルも酔ってるのか?
「悪魔と飲んだ時も ああやって潰したんですか」
「え?」
「冒険者時代に悪魔を
イシルが 手に持っていたグラスをテーブルに置く。
「
イシルはサクラの手から そっとグラスを奪うと、それもテーブルに置く。
「知りたいですか?」
あれ?もしや、またいらんこと言った?
二人がけソファーの背もたれに手をかけ、イシルがサクラに迫る。
「何があったか、知りたいですか?」
サクラはイシルを避けるように 後ろに仰け反る。
ソファーの肘掛けが 腰にあたり、カクンと体制が崩れる。
「知りたい?」
イシルが ぷつん、ぷつん、と、自分のシャツのボタンをはずす。
「いや、あの///」
ソファーにくずれたサクラの上に イシルがゆっくり迫ってくる。
シャツから覗くイシルの喉元が艶っぽい……
首から鎖骨にかけての 美しいライン……
雌豹のように しなやかで優美な動き……
妖しい色香が漂う。
「サクラ……」
イシルの繊細な指が伸びてきて――――
″ぺいっ!″
「いでっ!!」
……デコピンされた。
イシルが身を引き ソファーから離れる。
「悪魔は知り合いだったんですよ」
「へ?」
「再会を祝して飲んだだけです。サンミは大分脚色してますね」
そう、なの?
てか、なんでシャツのボタン外したんだ……
「お風呂に入ってきます。サクラさんも、もう寝てください」
「……はい」
イシルは 風呂場にむかおうとして立ち止まる。
「次に
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