49話 コロッケ
それから イシルは たまに村に顔を出すようになった。
サクラが三日続けて『笑う銀狼亭』に行くのに 一回は一緒に村にやってくる。
モルガンのとこに将棋を指しに。
村の人達も、特に騒ぐでもなく、今までもイシルがずっと村にいたかのように接してくれていた。
皆なりの気遣いのようだった。裏では 大喜びだったみたいだけど。優しい村だ。
イシルの作ったおでんも 食べた人からは『美味しかった』と好評を博し、サンミは バーガーショップと銀狼亭を分けるにあたり、何やら考えている様子。
近い将来『″おでん″始めました』て 貼り紙がでそうな感じだ。
そして、大騒ぎしていたラルゴが、泣く泣く次の村へと旅立って行った。
相当イシルに心酔していたようだが、彼は普通に恋愛出来るのだろうか……。
旅立つラルゴに、お弁当をもたせてあげようと、サクラはランチのあまりのマッシュポテトを使って
『コロッケ』
今回は 店で出しているマッシュポテトの残りをつかったので、バター多めだ。
ひき肉入り、ジャーマン、カレーの 三種類を作った。
サンミ、ローニ、サミー、ミディー、サクラの五人で作ったから あっという間だった。
ひき肉入りは、ひき肉と玉ねぎみじん切りを塩コショウで炒め、マッシュポテトと混ぜて 楕円形に成形しておく。
ジャーマンは、その名の通り、ジャーマンポテトをつぶしただけ。マッシュと違い、イモやソーセージの粒が大きくて成形しにくいので、一口大の真ん丸に丸めておく。
カレーコロッケは、カレー粉を混ぜておく。ランチでだしているホットドッグに使っている あのスパイスだ。
俵型に成形した。
それぞれ あとは 小麦粉、とき玉子、パン粉につけてあげるだけ。
パン粉は自家製。パンを崩して水分とばしました。
「「いただきます!!」」
ラルゴの分は ランチボックスにいれて、残りはみんなで食べる。
揚げ立てはやっぱりサイコーでしょう!
山盛り千切りキャベツからの―――コロッケ。
揚げ物にはやっぱり千切りキャベツ!
″ザクッ″
まずはひき肉コロッケから。
「なんだい、こりゃ!」
サンミが驚きの声をあげる。
「マッシュポテトなのに、全然違うじゃないか!」
そうそう。コロモがつくだけで、全然違う料理になるのさ!
「んー!これこれ」
さくっとコロモの食感と、その後にくるマッシュポテトの滑らかな口当たりがたまらない!ギャップ萌え。
ひき肉からでた肉の旨味と 玉ねぎの甘みが食欲をそそる。
「美味しい!サクラ天才!」
ミディーも 歓喜の声を出す。私が考えた訳じゃないけどね。
考えた人ありがとう!!
続いてジャーマンコロッケも食べる。
″ぽいっ もぐっ″
「はふ、あち」
一口で口に入れたのは失敗だった……マッシュポテトと違い、ゴロゴロ食感が イモたべてます!てかんじがする。口一杯になっちゃった。ソーセージも入ってるから、プリプリ、噛みごたえもある!
「これならエールが進むわね……」
ローニが呟く。確かに!
そして、俵型のカレー味。
″さくっ″
「んふ、期待を裏切らない味……」
チーズを入れても美味しいだろうが、今回は コーンを入れた。ここのカレー粉はちょい辛めだから、スパイシーの中に甘みが広がり 味のアクセントになる。
「子供が好きそうな味ね~家でも作ろうかしら」
サミーが感心する。
「この辺はイモ畑が主流だから、皆に教えてあげたら喜ぶわね」
サンミがパンに挟みながら ローニと話している。
「イモ系ならなんでもいけますよ。サツマイモ、里芋、カボチャなんかも美味しいです」
と、サクラが付け加える。
「これなら 野菜をまぜて子供に食べさせることが出来るわ!」
「そうね。ソースを何か考えてもいいね」
サミィーとミディーも アイデアが色々浮かんでいるようだ。
今度ウスターソースでも買ってくるかな。
どんな味か分かれば、きっと作ってしまうだろう。
サクラはコロッケを一種類ずつたべると、最後のカレーコロッケの残りをパンに挟み、キャベツともしゃもしゃ食べながら みんなの話を聞いていた。
◇◆◇◆◇
そんなこんなで 色々あり、前回の神との邂逅より二週間が過ぎた。
今日は検査日、予約いれてあります。
検査があるので 朝御飯は食べられません。
病院は8時半から。支度を済ませてリビングに降りる。
「……ん?」
目の端に黒いものがうつる。
リビングの窓辺に 黒い影。
「……ラン?」
サクラは影に近づく。黒い猫。
「ラン!」
サクラはランに駆け寄る。が、ランは スルリと サクラの横を通りすぎ、スタスタと歩いていく。
「?」
ランは サクラをチラ見すると、あからさまに プイッ
と そっぽを向いて出ていった。
「何アレ……私、なんか、した?」
いや、なにもしてない。だって、旅立ってからはじめて会ったし。
サクラは頭に手をやる。
ランからもらった髪紐もちゃんと使ってる。仕事のとき楽だから。
はてな?と考えてると、イシルがリビングにやって来た。
「あぁ、サクラさん、おはようございます」
「おはようございます、イシルさん。ラン、帰ってきたんですね」
「ええ、今朝返ってきて、ごはん食べた所です」
「なんか、機嫌悪くないですか?」
サクラの疑問符に イシルは苦笑する。
「なんか、しましたかね?」
「何もしなかったから、でしょうね」
「え?」
意味がわからない。
「ランディアはサクラさんの従者です」
「そうですね」
「
「……はい」
召還出来るってことね。
で、なにもしなかったから機嫌が悪いの?
「呼んで欲しかったんじゃないですかね」
「は?だって、用事で出かけてる人をわざわざ呼ばなくも……」
「そうですね」
イシルはくすっ と 笑う。
「いや、そもそも召還出来るなんて知らないし!」
「それでも呼ばれれば行きます。突然現れて驚かせたかったんじゃないですか?」
なにそのサプライズ企画、ドッキリ失敗で怒ってるの?私が悪いの??謝った方がいい、の???
きっとランディアは 必要とされたかったのだと イシルは思う。
サクラには言わないが。
「今日
「はい、いつも仕事が終わるくらいの時間には戻れると思います」
病院は八時半から、買い物は十時から店が開くとして、買い物しても二時頃には戻れるだろう。
「わかりました。迎えに行きます」
「いえいえ、一人で戻ってこれますよ!」
そんな、毎回悪いですって。
「迎えにいきたいんです」
「……ありがとうございます」
「それと、これを……」
イシルがサクラの手のひらに石をのせる
「キレイ……」
「サファイアです。買い物するでしょうから 対価が必要ですよね?」
え?これを、換金しろと?怪しくない?私。
「では、いってらっしゃいませ」
サクラの体が金色の光に包まれる
まって、どこで換金?証明書とかいらないの?相場はいくらなの?ランのことも中途半端なままだよ?ねぇ、イシルさ――――――ん!!!
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