50話 神託





「う~ん……よくはなってるんですけどねぇ」


目の前で神(医者)が うなっている。


「体重は減ってきてるんですけど、ねぇ……う~ん」


体重 80→78.7㎏


イシルの糖質オフの食事のおかげか、体重は落ちてきている。

が、どうやら思ったより薬の利きがよくないらしい。


HbA1c 8.6→8.3


「薬を増やしてみましょうか」


「えっ!」


サクラはいいヒマワリにはなれなかったのか……


「悪いわけではないんですよ。最初から大量の薬は使えないから、慎重に様子を見て 薬を決めているだけですから」


不安そうなサクラに神(医者)が説明する。


「急激にHbA1cを下げると 目に致命的な症状がでてしまうことがあるんです」


だから、HbA1cの下げ方は 神(医者)が管理する必要があるのだそうな。


増えた薬は『エクア50㎎』


「血糖が高いときに必要な分のインスリンを出してくれる薬です。朝だけ、一錠のんでくださいね。」


メトグルコとエクア二週間分の処方箋をもらい、診察室をでる。


自分のお金を下ろすため ATMに向かう。


暗証番号を入れて……


「あれ?」


見ると、残高が おかしなことになっていた。


「……増えてる」


そういえば、イシルに持たされたサファイアが消えている。


「勝手に換金されてる」


心臓に悪いよ。説明しといてよ イシルさん!

必要な分だけおろして 買い物をすることにした。





◇◆◇◆◇





まずは モルガンのために 湯呑みを選ぶ。


「湯呑みセットもいいけど、やっぱり……」


サクラが狙ってたのは お寿司やさんに置いてある 大きい湯呑み。

これなら冷めにくいし、将棋の最中 何回も入れに行かなくても済む。


小さめで 何回も入れたてを飲めるのもいいんだけどね。

モルガンの台所には お酒も置いてあったし、これならお湯割りとかも飲める。

あ、ドワーフはストレートでしか呑まないのかな?


魚の種類が ひたすら漢字で書かれたもの……

異世界あっちの人には解らないか。


相撲さんが画かれたもの……きっとこれも違う。


歴代首相……論外。


寿司のイラスト……美味しそう!美味しそうだが、異世界あっちには やっぱり寿司はないからなぁ。


意外と難しい。


無難に 綺麗な色の無地を選ぶか……達磨、家紋、招き猫、たぬき、あ!魚!魚のイラストだ。これならまだわかるかも。


う~ん……ん?これは!


サクラが見つけたのは『おでん』


湯呑みいっぱいに おでんのネタイラストが画かれていた。


これにしよう!モルガンさんもおでん食べてたし、イシルさんにも買って帰ろう!


急須も 少し大きめのを買って……あ、茶筒!


モルガンさんは茶葉をガラス瓶に入れていた。

一応暗い場所においてあったけど、もっと光を通さないものの方が茶葉が劣化しにくい。

空気・高温・湿気・光を遮断してくれそうな 中蓋のついた 木製の茶筒を選ぶ。

木目がきれいにでているものだ。


「喜んでくれるかな」


プレゼントを選ぶのは楽しい。

自分用に普通の湯呑みも買う。二個セット。淡い緑の焼き物で、中は白。お茶の色が映えるように。


次に向かったのは ドラッグストアーだ。

サンミに頼まれた口紅を購入。朱色のマットタイプとぷるぷるタイプ。

しかし、これだけではいけない。

何事もは大切である。

会社で旅行のお土産を配る時、差し入れする時、バレンタインのチョコを配る時。

貰えない人がいたならば、忘れた人が居たならば、かえって自分の立場が悪くなる……

バラマキは 多めに買っておくベシ。

打算的ですが、円滑な社会生活を送るために。

備えあれば憂いなし!

小心者なんです。ホントに。

ただ人にプレゼントするのが好きていうのもありますが。

なので、口紅も多めに買う。


一本350円、10本買っても3500円。

イシルさんから軍資金(?)もらって ちょっと調子に乗ってます。

細かいものをわっさり買うの好きなんです。

100円均一 大好きなんです。


種類がが多くて悩むが、ここは、自分では買わないようなセクシーなものや、可愛いものを楽しんで買おう!

ドワーフの女性は わりとはっきりした色が好みのようだ。

赤系のものを多く購入。


なんとなく ピンクは 自分にはハードルが高かったんだよね……顔が膨張して見えそうで。


オーロラ・ピンク、コーラル・ピンク、コーリンシアン・ピンク、コスモス、ストロベリー、チェリー・ピンク、パウダー・ピンク、パステル・ピンク、ピーチ、フェアリー・ピンク、ベビー・ピンク、ミルキー・ピンク


見てるだけでも楽しい。


自分的には 口紅より リップかな……

冬だし、乾燥を防げる。今は可愛いものが沢山でてる。

これならいいか。と、自分用にコーラルピンクを購入。


200円 と、更に安い。もう何本か買う。


次は大型スーパーに行き ウスターソースやら、ケチャップやら、調味料をいくつかサンプルとして買った。


あ!ペットコーナーがある。

猫を飼っていたのもあり、つい見てしまう。

田舎の実家には猫がわんさかいるから……


大好きな100均にも寄り、昼をケ◯タッキーで済ませ、ぶらぶら見て回ってたら 結構いい時間になっていた。


やば!帰らないと!イシルさん待たせちゃうよ!


慌てて薬局で薬を受けとると 薬局のドアをでる。


強・制・転・移!!


「おかえりなさい」


目の前に 微笑んでいるイシルがいる。


「今回も荷物いっぱいですね」


そう言って 当たり前のように荷物を持ち、サクラの手をとる。

今回は恋人つなぎじゃなかった。ほっとする。毎回は心臓もなたいよ。


「どうでしたか?現世あっちは」


「あんまり結果良くなかったです」


「そうですか……」


「あ!体重は落ちてましたよ!イシルさんのおかげです」


「いえ、サクラさんが頑張ったんですよ」


謙虚だな、イシルさん。


「のんびり、いきましょう」


イシルさんに言われると 穏やかな気持ちになる。


「はい」


「あ!お土産をかいました!」


「またですか?気を使わなくてもいいのに」


「いえ、見た瞬間 イシルさんにと思ったんです!」


「何でしょう……楽しみです」


他愛もない会話をしながら 森の中を家へと歩いた。





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