29話 肉豆腐とローストビーフ






今晩のメニューは肉豆腐だ。

豆腐とひき肉とネギを使った 辛くない麻婆豆腐みたいな感じ。


「サクラさん ネギをおねがいします」


まずは長ねぎを洗って食べやすい大きさに切る。

たべてる!て感じを出したいので、あまり小さくないほうがいい。

緑の部分もザクザクつかう。


イシルはその間に 味付け用の調味料を作っていた。

イシルさん、和食が好きなのかな?

出汁をよく使う。あ、生姜も切ってるなぁ

味見すると 薄いめんつゆみたいな味だった。


熱したフライパンに油をひいて、長ねぎと生姜をいためる。

ネギのいい香りがする。


「油が跳ねるので気をつけてください」


豚挽き肉を加えて塩をふる。

あぁ、肉のいい香り……

そこに豆腐を入れて軽く混ぜる。

一旦火を止めて調味料を加え もうひと煮立ち。


「あ、とろみがついてる」


片栗粉かな?だから一度火を止めたのか。


「胃がびっくりするといけないので、今日は軽めにしました」


すみません、イシルさん。何から何まで……


サラダは 水菜と千切り大根のあっさりポン酢風味

イシルは大根千切り中

ツナが用意してあるから それも入れるのかな?


「……肉ないの?」


キッチンを覗きに来たランがメニューを見てもの足りなさそうにつぶやく。

一応肉豆腐なので 肉ですが。


「ダッシュで街まで往復したのにー」


「帰ってこなくてもよかったんですが?」


イシルが素っ気なくいい放つ。

ランは スリッと イシルに近づくと 耳許でささや


『邪魔したの怒ってんのー?』


したり顔のラン。

イシルは 持っていた包丁を笑顔でランに向ける。


「お風呂にはいってきなさい。そうしたら用意してあげます」


「えー、水ヤダ」


「ダッシュで街まで往復したんですよね?入りなさい」


ぷいっ と ランは方向転換すると、食器を用意しているサクラにすり寄る。


「サクラ、一緒に入る?」


『ガシッ』


「にゃっ!?」


イシルは ランの襟首をつかむと ズルズルと引きずっていき ぽいっ と 風呂場に放り込んだ。


「ちゃんと洗うまでだしませんよ」


なんだかんだ言って 仲良いよね?


ランが風呂場にいる間にイシルはもう一品つくる。

牛ブロックをとりだすと 塩コショウをして 黒アルミに包み、グリルに放り込む。

コンロの真ん中についてる 魚焼くとこね。

肉の大きさが400g以上になると入らないかも……

ひいてある網は取り除く。

5~7分くらいしたら 火を切って 余熱放置。

簡単ローストビーフの出来上がりだ。

火が入りすぎると 肉が固くなるので 肉の大きさによって時間調整が必要だけどね。

肉は アルミに包む前に フライパンで焼いてもいい。お好みで。

黒アルミは普通のホイルより熱吸収がいいから 時短もできて、色々つかえます。

特に焼き芋系。ジャガイモ、里芋、サツマイモ……あ、今は控えてますが。


薄くスライスして 水菜サラダの上に乗せた。

ランの分は 厚めに切る。

どうやら ツナをやめて、ローストビーフにしたようだ。

あっという間に水菜サラダがローストビーフサラダに変身した。


風呂から出てきたランも ニンマリしている。


「「いただきます」」


三人で食卓をかこむ。


まずはローストビーフサラダから。


うっすら ピンク色に染まったローストビーフを 水菜サラダと一緒に口に入れる。


「はぐっ……もぐ」


牛肉の歯応えと 大根水菜のシャキシャキ感。

アッサリポン酢で いくらでもたべられそう!


「んー!」


美味しい!プロの仕上がりすね イシルさん!

ランもモリモリ食べてるし。てか、もうないし。


「おかわり」


「……野菜も食べないとあげません」


「野菜キライ」


「食べないと毛玉吐けませんよ」


「あは、毛玉……」


「何笑ってんだよサクラ」


あ、すみません、人のこと言えません、

今日私もやらかしました。はい。

食事中にすみません。


ランはサラダを掻き込むと 空になった皿をイシルに差し出す。


「どうせ足りないと思ってましたから」


イシルがおかわりをもってくる。

なんて面倒見がいいんだ イシルさん。

だんだんお母さんに見えてきた……


ランは肉豆腐は熱くてまだ食べられないらしい。

サクラは先にいただく。


「はふっ」


イシルさんの豆腐は美味しいなぁ……

そぼろあんがよくなじみ 豆腐を絡めまとっている。

生姜も控えめに風味がする。

そして、大きめねネギが、とろっと甘い。

ネギの風味が際立っている。

そして、多めに入れた挽き肉がたまらない。

胃の中が あったかい。

優しい味……イシルさんみたいだ。


なんだかいろんなことがあった一日でした。



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