19話 侵入者




「サクラさん、将棋できますか?」


夕食後、イシルが将棋盤をもってきた。


因みに夕飯は 鳥のササミをハーブで焼いたものとキャベツサラダだった。

キャベツの上にはダイスに切ったモッツァレラチーズと、同じようにダイスに切ったトマトがえてのっていた。

いわゆるカプレーゼの刻んだバージョンだ。


「どうしたんですか将棋なんて」


なんでそんなものがある?


「シズエが持ってきたんですよ」


チョイスがシブイなシズエさん


現世あっちからもってきたんですか?どうやって?」


「二週間ごとに神に呼ばれると言っていましたよ。帰って来るときに色々もってきてましたね」


定期検診か!なるほど。神、二週間後またねって言ってたなぁ


「すみませんイシルさん、将棋はよくわからなくて…あ!将棋崩しならできます」


「将棋崩しですか?」


「ええ、こうやって……」


サクラは将棋の駒の袋を逆さまにして、駒の山を作りながら袋を引きぬいていく。


「いいですか?音が鳴ったらアウトですよ?手を離してくださいね。人差し指をつかって……こう……とりやすいところを探して……」


すーっと。


「イシルさんの番です」


「なるほど」


スッ と イシルは事も無げに駒を一つひく


「最初は簡単ですよ。じゃあ……これ……」


サクラがひく


得点は

玉・王 ・・・ 10点

飛・角 ・・・ 8点

金・銀 ・・・ 5点

桂・香 ・・・ 4点

歩 ・・・ 1点

とした


交互にひいていく


どうやらサクラは今『金』を狙っているようだ

人差し指を使って 慎重に『金』を引いていく

真剣な顔と、集中してちょっととんがった口、その横のほっぺたがぷっくりしていて、みていて和む


「にひひ、イシルさん、金ですよ?」


嬉しそうにどや顔で笑う。

イシルは『銀』をひく。すっ、と


「なんすかそれ!」


『銀』の上には『桂』も乗っていた

びっくり顔のサクラ。表情がくるくるかわる


「うう……負けませんよ……」


サクラは『飛』へと 手をかける


「……むむ」


慎重に、慎重に、『飛』をひく

イシルはテーブルに肩肘をつき、楽しそうに目を細めながらその様子を眺める。

また口がちょこんととんがっている

集中している時のクセなのかな。

あのほっぺにさわってみたい……とイシルは思う。


″カチッ″


「あぅっ!」


「クスクス…手を離してください、サクラさん」


「くっ……」


悔しそうなサクラ。

山から『飛』を抜いたところで音がしたのだ。


「いただきます」


イシルは今サクラが抜いた『飛』をすーっとひいていく。


「ズルい……」


「そういう遊びでしょう?」


余裕の笑みで涼やかに言うイシル


「かくなる上は……」


サクラは『王』に目をつける


「無謀ですね、サクラさん」


「いけますよ!」


慎重に……慎重に……


「サクラさん、目がよっててちょっと面白い顔になってますよ」


「イシルさん、邪魔しないでください」


ゆっくり……ゆっくりと……


「可愛いいです」


「……その手には乗りません」


音がしないように……


「触ってもいいですか」


「ダメです」


もうちょい……


「キスしてもいいですか」


「なっ///」


″ガシャガシャッ″


「あ″ー!!」


クスクスとイシルが笑う


「鳴りましたね、音」


「おかげさまで……盛大に」


サクラはジト目でイシルを睨む


「将棋は頭をつかわないと」


「違う気がしますが?」


あはは、と イシルが笑う

結局、サクラの惨敗だった


「明日はサンミの所でしたね、今日は早目に寝たほうがよいのでは?」


「そうですね」


「山歩きもしたから疲れたでしょう?」


「ありがとうございます、イシルさん」


席を立ってダイニングをでる


「サクラさん」


階段をのぼる手前でイシルが声をかけてきた


「?」


サクラがどうかしましたか?と イシルをみあげる


「忘れてました」


イシルは少ししゃがむと……


″チュッ″


サクラのほっぺにキスをした


「ななななな///」


「僕が勝ったので褒美はいただかないと」


「そんな約束は……」


「ダメだとは言いませんでしたよね?」



~~~


「触ってもいいですか」


「ダメです」


もうちょい……


「キスしてもいいですか」


「なっ///」


~~~


あの時か!?


「おやすみなさい。よい夢を」


そう言ってダイニングに入っていった


寝れるかー!(≧皿≦)





◇◆◇◆◇





それでも山歩きは疲れたようで、腹筋40を終えて布団にはいったらうつらうつらしてきた。


″モゾモゾ″


何かが布団にもぐりこんでくる。


『にゃー』


「おまえかぁ~」


サクラは黒猫を抱きしめる。


「あったか~い」


黒猫の顔に自分の顔をすりよせる。


「お前、今日は大活躍だったね」


黒猫は答えるかわりにサクラの顔をなめる


「あは……可愛いな、たしか、ランディア……だっけ?」


あおい瞳が見つめる


「イイコだね……ランディア」


吸い込まれそうなほど清んだあお


「おやすみ……ラン……」


『にゃー』






◇◆◇◆◇





「……おなかへった」


サクラは夜中に目が覚めた


「さむ……」


寒くて、ふとんの中に ぬくもりをもとめる


「あったかい……」


ふとんの中のぬくもりは、それに応えるように サクラを引き寄せ、抱きしめた。


「ん……」


サクラはそのぬくもりに顔をすりよせる


トクン、トクンという鼓動が耳に心地よく、

スベスベした人肌の温かさが安心をあたえる


「……人肌?」


びっくりして目が覚める


Σ(○_○)!?


目の前に見えたのは 月光に浮かぶ男の胸板


!?」


あわてて目をあげる


「起きたの?」


男がサクラを見つめていた


目の前に キレイな顔がある


月光に 瞳があおく 光っていた







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