18話 アボカドサーモン麦にぎり
イシルとサクラは二人並んで釣糸を垂れる。が、
結局、黒猫のおかげで魚が逃げてしまったのか、一向に釣れなかった。
仕方がないので、お昼は黒猫が仕留めた魚をいただくことにした。
イシルは魚を捌いていく。
「虫はいないようですね」
サーモンのようなピンク色の身をした魚をさばき、
小型の魚は串に刺し 焚き火に
残りは亜空間ボックスいきだ。
取ってきたキノコは塩水で、5、6回あらう。
キノコと山菜はスープになるらしい。
「サクラさんはこれをお願いします」
アボカドを渡された。
「賽の目に切ってください」
アボカドはまず半分に切る。
真ん中に硬いタネが入っているので、ぐるっと切れ目を入れて ひねって二つにするのだ。
熟れていれば実と皮はわりとすぐに剥がれる。
一番簡単なのはスプーンでくりぬくやり方かな。
アボカドの実に縦横に刃を入れて四角く切っていく。
「これと混ぜます」
ボウルの中にはサーモンのたたきと麦、ネギ、ゴマが入っていた。
少し小さめに賽の目切りしたアボカドをいれて混ぜ合わせる。
わさび醤油の匂いがする。
混ぜると、サーモンをつなぎとしてくっついていく。
一口サイズをスプーンですくって、クラッカーサイズに切った海苔の上にのせる
もうさ、突っ込むまいと思うけどさ、醤油とか海苔って……
きっと「僕がつくりましたよ」ていうんでしょ
今日のランチは アボカドとサーモンと麦にぎり と 茸と山菜のお吸い物。焼き魚
「いただきます!」
今日はサラダがない。
かわりに
うちの田舎では庭に生えてました。
生のまま皮をむくと、手が紫色に染まってしまう…
現世では水煮売ってますからね。はい。
サクラは
『しゃくっ』
繊維質な
噛むと『じゅわっ』と 優しいだしの味わい
そしてほのかに苦い
「オトナの味ですね……」
「くすっ」
「
「頑張ったかいがありましたよ」
ほんと、マメですねイシルさん。尊敬します!
そして、アボカドサーモン麦にぎり
『パリッ もぐっ』
「ふふっ」
思わず笑みがもれる
海苔の風味と醤油てTHE日本人!ですよ。
アボカド、麦、ゴマ、ネギ、一つ一つはバラバラなのに、サーモンによって一つにまとめられている。
物理的にも、味覚的にも。
アボカドとサーモンは相性いいすね~
マヨネーズと混ぜて今朝みたいにトーストにのせてもいいし
サラダにのせてもいい。巻いて食べたい。
サーモンをタタキじゃなくて、アボカドと同じ大きさにして あえるのもいい。
アボカドは一価不飽和脂肪酸が豊富で、サーモンはオメガ3脂肪酸がふくまれている。どっちも糖尿病改善に役立つそうな。
山菜のお吸い物もいただく
『ふー、ふー、…ズズッ』
「あちっ!」
キノコと山菜からとろみが出てて、思ったより熱かった。
「サクラさん、気をつけて」
「はひ…れも、あったまります」
イシルは、ふー、ふー、と、美味しそうに食べるサクラを楽しそうに見守る。
魚の丸焼きにもかぶりつく
「ん~!大自然の恵みを感じますね!」
「クスクス…面白いこといいますね、サクラさんは」
「そうですか?大自然に感謝!感謝ですよ」
現世にいると、当たり前にスーパーにならんでいる食材
誰かがどこかで育てていてくれたり
誰かが何処かまで捕りにいってくれたり
そんなことなんだな、と感じた。
感謝、すよ。
「イシルさんにも感謝です。こんなに美味しく作っていただいて」
「大したことありませんよ」
「いいえ!マメだし、面倒見もいいし、イケメンだし、優しくて、料理上手で、気が利いて……」
「誉めすぎですよ」
イシルは少し困ったようにはにかむ
「いつでもお嫁にいけますね!!」
「は?」
「へ?」
あれ?これは通じない?
「あはははは!」
イシルさん大爆笑。
「…すみません」
サクラ大爆死。
イシルはひとしきり笑うと、サクラにこう言った
「じゃあ、サクラさんがもらってくれますか?」
◇◆◇◆◇
帰り道
イシルが 右手を差し出だす。
「帰りますよ、旦那様」
「~///」
「くすくす」
「イシルさん、笑いすぎです」
「サクラさんが可愛くて」
「またそんなこと……からかいすぎです」
「はいはい」
イシルはサクラの手をとって歩き出す
今朝と同じようにサクラの目の前にに イシルの後ろ姿がみえる
思ったより肩幅があって、
細く見えるのは 手足が長いからかな……
肩から伸びた筋肉質な腕
引かれた手は力強く、男の人だった
細く長いキレイな指
その見た目に似合わずゴツゴツしていて、大きく、少し 冷たい
そして、
今朝よりももっと 楽しそうだった
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