13話 やさしさにつつまれて



あたたかいものに包まれているようだ


なんだか ほっとする


お日様の中ってあったかい……


『ちょいっ』


「ん……」


『ちょちょいっ』


「んー」


なにかが顔をくすぐる


『ぷにっ』


肉球?


『ペロペロ』


顔を舐められてる

サクラは思わず顔をしかめる


『かじっ』


「わかったわかった!」


顔をかじられてサクラはようやく目を覚ます


『ニャー』


黒猫がサクラをのぞきこんでいた。

綺麗な蒼い瞳をしている

手を伸ばして頭をなでると『もっと』とサクラにすりよってくる。


「甘えん坊だなぁ」


さて、どれくらい寝たのか……

陽の落ち具合からすると 一時間くらい?

時計がないと不便だ


『ファサッ』


半身を起こすと何かが膝の上に落ちた。


「上着?」


イシルの上着だった。


「あったかかったのはイシルさんのおかげか」


イケメンスキルさりげなさすぎる!


胸にいだくと上着からイシルの匂いがする

魔物避けでこキスの時に感じたイシルの匂いと同じ


「いやいやいやいや、邪念は捨てよう。これは父性愛だ」


自分に言い聞かせる。

彼氏なんて久しくいなかったし、免疫なんてほぼ無しだ

それでこんなにドキドキしてしまうんだろう。

あんな美形、近くにいるだけでもドキドキするわ!


サクラは上着をもって立ちあがる


「イシルさんどこにいるんだろう、研究室かな?」


研究室に向かおうと、母屋に差しかかったとき、いい匂いがしてきた。


「トマトソースの匂い?」


玄関からイシルが出てくる


「あぁ、サクラさん、起きたんですね」


「すみません、寝ちゃって」


「今日は色々ありましたからね。疲れたんでしょう」


「上着、ありがとうございました。洗濯しましょうか?」


「いいえ」


イシルはサクラから上着をうけとると、そのまま羽織る

そして襟元をつかみ、すうっと息を吸い込むと


「いいえ、日向のいい匂いがしますから」


と、微笑んだ。

今日のベストショットいただきです。カメラないけど。

心のアルバムに刻みました。


「今仕込んだばかりなのでもうしばらくかかりますよ」


「トマトソースのいい匂いですね~」


うっとりする


「サンミがハンバーグを持たせてくれていたので……」


「ハンバーグ!!」


「今朝の残りのコンソメスープを使って煮込みハンバーグにしました。」


夕飯は煮込みハンバーグ!


朝食で出たコンソメスープの残りに水を足して、大量の玉ねぎとトマトの水煮、サンミが持たせてくれたハンバーグを焼かずに入れる。

以上!

要はコンソメとトマトホール缶に玉ねぎとハンバーグをぶちこんだだけ。あとは煮ておく。

最後に塩で味を整える。

どちらかというと、トマトスープの中にハンバーグが入ってるって感じかな。

なぜかというと、何回か火入れしてるうちに煮詰まってくるし、ハンバーグが崩れてくる。

この崩れた感じがたまらなく美味しいミートソースになるのです。だからハンバーグはその日食べる分より多めに入れる。

はじめから挽き肉をバラして足しておいてもいい。


初日はハンバーグ、次の日はチーズを足してグラタン風になったり、、ニンニクとペンネでアラビアータになったりする。

結構万能な料理だったりします。






◇◆◇◆◇






煮込んでいる間に 簡単に母屋の掃除をし、洗濯物が乾いたので取り込む。

洗濯かごをもって母屋に入ったところで イシルの声がした。


「まったく勝手なことばかりして」


|д゜)ひょっこり


イシルがサラダをつくっているようだ


「無茶をするからイノシシごときに負けるんですよ」


誰かと喋ってる?


「どうせ魔力がつきたところを狙われたんでしょう」


誰もいない?


「……無視ですかいいでしょう」


イシルは だんっ と、包丁でキャベツを切ると ダイニングの椅子に刃をむけた。


「僕はお前をここに置くつもりはないからな」


椅子の上では 黒猫が『くぁ~』と欠伸をする。


イシルさん、猫と喋ってる……

しかも お説教?

可愛いすぎる


「サクラさんもいいですね」


「えっ!!」


気づかれてた


「コイツはノラにかえるんです。情をうつさないように。」


「…はい」


捨て猫を拾って怒られてる気分ですよ お父さん。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る