10話 まいごのまいごのクロネコちゃん




遠足は帰るまでが遠足です

帰りはまっすぐ家にかえりましょう。

小学生時代六年間

中学生時代も合わせると九年間、

当たり前のように受け流してきたこの言葉。

今 痛感している……

センセイごめんなさい

おっしゃるとおりでした。

そんなことが思い出される


これが『走馬灯』てヤツ?










「サクラさん……サクラさん」


肩をつかまれる感覚でサクラは目をあける


「……イシルさん?」


目の前に心配顔のイシルがいた。

ここは魔方陣の部屋

もどれた!


「……助かった」


「大丈夫ですか?急に強い念を感じたので、何かあったのかと心配しましたよ。怪我はないんですね?」


イシルはサクラの肩を掴んだまま 血のあとがないか確認する。


「はい、大丈夫です。イノシシに襲われて……」


「イノシシ?」


イシルは怪訝な顔をすると、スッと サクラのおでこに触れる


うぉ!そこは……


「おかしいですね、魔物避けはきいているはずですが……」


あ、あれキスは魔物よけだったんだ……


「コイツのせいですか」


イシルはサクラの腕の中に収まってる猫をみつけた。


放浪者ランディアか」


「ランディア?知ってるんですか?」


「あ、いえ、ここにもたまに餌をもらいにきていたので」


ん?なんか含みがあるなぁ


「とにかく着替えてください。お風呂にも入って、怪我がないかちゃんと確認しないと」


イシルはサクラから荷物を受けとると 着替えを渡してくれた。







◇◆◇◆◇






幸いサクラにはかすり傷一つなく、助けた黒猫もイシルが治療しておいてくれた。


そして今 ダイニングテーブルの上には サンミさんが持たせてくれたランチが!!


「ふぉぉ!!」


特大のソーセージがはさまったホットドッグ

ケチャップはかかっていないが、何やらスパイシーな香りがする


「頂きましょう」

「いただきます!」


サクラがホットドッグにかぶりつこうとしたら……


「待ってくださいサクラさん」


イシルストップが。


「ふえ?」


「サラダから召し上がってください」


と、少し大きめのサラダボウルを差し出す


「シズエが言っていました。食べる順番が大切だと。まずはサラダからどうぞ」


「ありがとうございます」


いやだね、がっついちゃうとこでしたよ

ベジファーストですねイシルさん。

最近はミートファーストなんてのもあるみたい。


「結構ありますね~」


山盛りキャベツ(笑)

よくあるカットキャベツ一袋分くらい?


「昨晩も今朝ももの足りなさそうでしたので、サラダならよいかと量を増やしました。食べられないなら僕が食べますから、どうぞ」


「重ね重ねすみません」


キャベツにはハーブソルトとオリーブオイルがかかっていた

シンプルだけど、美味しい!!


そして、メインのホットドッグ!


「あ……」


「どうしました?」


「いや、医者に白いパンはなるべくたべるなといわれてて……」


ちょっと躊躇する


「サクラさん」


イシルが諭すように言う


「はじめから完璧にやらなくてもいいと思いますよ」


「え?」


「苦しくありませんか」


苦しい…苦しくよ。我慢なんてしたくないし。

昨日の夜もお腹へってなかなか寝付けなかったし、夜更かし間食だらだらしたい!!


「でも」


「その心がけは大切だと思います。ですが、糖分は体にとって必要なことも事実です」


「そう……ですね」


「とりすぎなければいいんじゃないでしょうか?」


いい……のか?


「食べなくてもいいものは食べない。でも、必要なものは食べるべきです」


「はい!」


サクラはホットドッグにかぶりつく


『ぱしゅん!』


ソーセージのはじける音


『じゅわ~』


肉汁が溢れ出す


パンのサイズは普通なのだが、その倍の長さのソーセージがはさまっている

なのでパンまで到達しない。


「カレー!?」


スパイシーな香りの正体はカレー風味

こんがり焼かれた香ばしいソーセージとカレーがよく合う


「ん~おいしい!」


合間にもサラダを食べますよ!ちゃんと

あ~キャベツとも合うわ ソーセージ

粗挽きのポークがぷりぷりと口のなかではじける

かむたびに味覚が刺激されて 幸せホルモン大放出!!


「あぐっ」


『ザクッ』


いよいよパンに到達しました

かたすぎず、柔らかすぎない、ソーセージにベストマッチのパン。あー小麦最高!!

そして何より隠し玉!?

ソーセージの下に 細かく刻んだカリカリベーコンが!!!

ソーセージとベーコンのダブルスでノックアウトですよ~!


「んー!」


このカリカリがたまらないっ!

サンミさん天才!!


「はぐっ…もぐもぐ」


さらに粒マスタードがでてきましたよ!

つぶつぶの酸味がいいわぁ~


再びサンミスペシャルにかぶりついたところで イシルさんがこっちをみてるのに気がついた。


『もぐもぐ…?』


口一杯にサンミスペシャルが入ってるので目で『何ですか?』と問うてみる。


イシルはクスリと笑い、 サクラに手を伸ばすと 親指で きゅいっ と サクラの口の端を拭った。


Σ(O_O;)


「ついてる」


「ゴックン……すみません」


こんなことをサラリと出来るなんて 生粋のイケメンだな


「イシルさんも食べないと 冷めますよ?」


サクラは恥ずかしさを誤魔化すために、イシルにも食事をすすめる。


「はい。でも」


「?」


「見ていたいんです。貴女が食べているところを」





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