9話 帰るまでが遠足です




「いや~、助かったよ」


一段落したサンミが サクラにお茶を出してくれた。


「一軒しかない食堂だからね、昼時は戦場なんだよ」


笑う銀狼亭は サンミさんの他に二人の娘さんがいる。娘さん二人はもう結婚していて、夜は通いできてくれているのだが、昼はローニさんていう通いの人が一人。

旦那さんは鍛冶職ではなく、猟師だそうだ。

腕前は おわかりのとおり、笑ってる銀狼を仕留めらるほどに。


まぁ、サクラがやったことと言えば 洗い物と、大量のジャガイモの皮むき

そんなに戦力になったとはおもえませんが。


「何言ってんだい、それが一番大変なんじゃないか」


と、ばしばしと背中を叩かれた

ほめられて素直にうれしい。


「ほれ、これに着替えなよ」


サンミさんに服を渡される。


「?」


「あんたさ、来るとき変な目で見られなかったかい?」


「……あ」


そうか、服装か 見慣れない格好してたからチラ見されてたんだ、納得。


「こいつは洗濯しとくからさ、明後日またきなよ。イシルに頼まれたあんたの着替えも用意しとくからさ」


「え!イシルさん、そんなことを……」


「なんだい、しらなかったのかい? まぁかわり者だけどさ、いいやつだから 頼んだよ、サクラ」


「あ、はい」


なにを頼まれたかわからないがとりあえず返事をしておこう。頼りっぱなしなんですごめんなさい。


「それから、あんたのカバンにイシルへの手紙と昼飯入れといたからさ、帰ったらイシルと二人で食いなよ」


「ありがとうございます!」


「ほんと助かったよ。また明後日、まってるよ」


こうして 無事任務を終了した。





◇◆◇◆◇





サクラは村を出て魔方陣へとむかう


「お昼何だろな~♪」


朝は素敵なモーニングだったとはいえ、前の日の夜もあっさり鍋

そろそろガツンと食べたいですよ。

昼食に想いを馳せながら 目的の魔方陣の場所が見えてきた。


「ん?」


その手前に 何やら黒っぽいもふもふがいる


猫かな?


近づいてみると、やはり猫にみえる。

サクラはそっと抱き抱えてみた。

猫は抵抗もみせず、サクラの腕の中にいる。


かわいい(σ≧▽≦)σ

でも なんか 弱ってる?


ふっ と 右側に気配を感じる。


『フスー……フスーッ』


ケモノの鼻息のような音


サクラは恐る恐る右側を向く


(; Д)゜ ゜


イノシシ! イノシシだ!!

猪が鼻息荒くこっちに狙いを定めている!!


もしかしてこのおそわれてたの?


サクラはまんまと『飛んで火に入る夏の虫』状態!!

大ピーンチ!!!

どうする?どうする!?


→たたかう

まほう

糖分補給

にげる


なんだよ糖分補給て!いや、低血糖こわいすよね。じゃなくて!!コンボウすらもってないし、生活魔法ごときが効くわけもない!こんなんにげる一択でしょなんで一番大切なにげるが一番下!?

どこににげる?


→うえ

した

うしろ

よこ


選択肢おかしいでしょ 上と下はどうしろと!!

えーっと、イノシシはまっすぐしか進めないんだよね?じゃあよこ、横だ!イノシシに対して横てことは、このまままっすぐ魔方陣に走っていけばいいんだな!


サクラはゴクリとつばをのむ


守るのはこのと自分と背中リュックの飯!


イノシシが地面を蹴る

サクラも地面を蹴る


「やった!」


サクラは(できるかぎり)全速力で走り、魔方陣に滑り込む


『ズザザッ』


「えっ?」


なんということでしょう! ほっとしたのもつかの間、曲がらないと思っていたイノシシが急ブレーキをかけ、軌道修正してサクラめがけて突っ込んでくる!


うわーっ!!!きいてないよー!!

イシルさん、イシルさん!イシルさんんんっ!!!!!

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