8話 笑う銀狼亭
村の入り口には門番が一人立っていた。
サクラを見止めると
「あんた 旅人か?」
「いえ、あの この村のサンミさんて方に届けものがあって」
「サンミさんとこに?……あんた、もしかしてイシルさんのとこからきたのか?」
「はい、そうです」
「……そうか……まぁ、入んな。サンミさんとこの店は最初の曲がり角の左手側だ。笑う銀狼亭て看板でてるよ」
「ありがとうございます」
何だろう……若干引きぎみなのが気になるが 親切に教えてもらえたので お礼を言って村に入る。
のどかな雰囲気の村
サンミさんはドワーフとのことだが、さっきの人は普通の人間ぽかったな。冒険者かな?
ドワーフの村なのか、金属を叩く音が遠くに聞こえる。
露天を広げている旅商人もちらほらとみえる。
ん~?なんか視線をかんじるなぁ
さっきから目が合いそうになると皆が目をそらす
旅商人がいるくらいだから 外から来た人間がいても珍しくはないと思うんだけど?
「おっ、あそこかな?」
『笑う銀狼亭』の看板を確認し、サクラは扉をあける。
『チリリーン』
小気味いいドアベルが鳴った
「すみません~うおっ!」
扉を開けると 正面に大迫力の銀色の狼が牙をむき出しにしてサクラを睨んでいた。
思わず身をすくめる
「あっはははは!あんたはじめてかい?」
豪快な笑い声の主
この店のおかみさん サンミさんだ。
「こいつは 剥製だよ」
よくみると頭だけだった。
「昔 旦那が狩ってきたのさ。顔が笑ってるみたいだろ?」
いやいや、口角上がってるんじゃなく牙剥き出してるよねコレ。笑ってないよね!?
「で、食事かい?」
「あ、いえ、この店のサンミさんに、これを」
サクラはリュックから手紙と人工魔石をとりだした
「私にかい?誰だろ」
「イシルさんからです」
「イシルだって!?」
サンミはサクラから手紙と人工魔石を受けとると 急いで手紙を読み出した。
「ふ~ん、あんた 人間かい?」
「はい……一応」
「ぷっ、なんだい一応て」
「いや、なんとなく」
『むにゅ』
「ひゃぃ??」
サンミがサクラの頬をつかむ
「ドワーフにしてはだらしのない体してるもんね」
「ひゅいまひぇん……」
返す言葉もございません。
いやさ、日本人にしたらかたぶとりの落ちにくい脂肪なんだけどさ、ドワーフの筋肉質な立派な体とくらべられたらぷよぷよでしょ何もいえません。
「ぷぷぷっ、まぁいいさ。あの
『チリリーン』
「いらっしゃ~い 悪いね、客だ。ちょっとまっててくれるかい?」
サンミは接客に戻る
『チリリーン』
『チリリーン』
「いや~腹へったね、何にすっかな」
「今日は寒ぃな あったけぇの食いてぇな」
「おーい!おかみぃ~」
昼時なのか、立て続けに客が入ってくる
サンミさんは忙しそうだ。
サクラはいずらくなり 遠慮がちに声をかける。
「サンミさん あの~」
「なんだい!?」
「手伝いましょうか?」
エールをもったままサンミがにっこりと笑った。
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