7話 はじめてのお使い

イシルの研究室には 扉が二つあった。


「こちらです」


奥の扉をあけると、三畳ほどの小さな部屋

中にはなにもない

床をみると 何やら模様が書かれていた。


「魔方陣?」


「そうです。サクラさんは案外物知りですね。話がはやい」


どうぞ と、中へ促される


「この魔方陣は 村の近くへと繋がっています。魔力をこめれば発動しますが、サクラさんの魔力量では無理でしょう。僕がおくります。真ん中に立ってください」


転送装置てことか


「イシルさんは行かないんですか?」


「僕は……」


イシルは少し戸惑う様子をみせる


「忙しいので」


取り繕うように笑う


(……村にいきたくないのかな?)


「僕が行っては サクラさんの仕事にならないでしょう?」


「たしかに」


働かざる者食うべからず。


「村の者は魔方陣のことを知りません。内緒ですよ」


『しー』と 人差し指を唇にあてる


やっぱりなんか可愛いなこの人

何をやっても絵になる


「帰りはどうすればいいですか?」


「あぁ、そうでしたね、う~ん……」


イシルは少し考えて


「魔方陣の上で僕の事を考えてください」


「へ?」


イシルさんの事を?


イシルはサクラを真っ直ぐに見つめ 表情を柔和らげると


「僕が貴女をみつけるから」


なっ、なんだ、なんだ、なんだか恥ずかしいぞコレ

急にデスマスじゃなくなるのは卑怯だー!

貴女てなんだー!

その顔は凶器だー!

顔が///顔があつい!!


イシルは戸惑うサクラに近づくと サクラの前髪をあげて


『ちゅっ』


おでこにキスをした


仝〓※☆Ω(@□@;)!!?


「僕への想いが強ければ強いだけいいですよ」


クスクスと笑いながら 扉を閉めた。


『ぱたん』


なっ……


なんだそれーщ(≧□≦щ)

言いっぱなし放置かよ!

やりっぱなし羞恥かよ!

どうしろと!?

耐性なんかないぞコラー!!


そんなサクラの動揺などお構い無く 魔方陣が赤紫色に光りだす


心の準備がぁ~!!


なんか二度目だなと、既視感デジャブをかんじたままサクラは光りに包まれた






◇◆◇◆◇





「……神の時といっしょか」


サクラは大きな木の根元に立っていた。

すうっ と わずかに残っていた光の粒子が消えていく。

下をみると 茂みに隠れるように 魔方陣が描かれていた。


「帰りはここで イシルさんをよべばいいのね」


イシルさんを……


ぼん と 顔が熱くなる


「いやいや!今考えてどうする!お仕事お仕事」


サクラが辺りをみまわすと、村の外壁がみえた。

壁づたいにいけばきっと入れるだろう。


「まったく、イケメンてやつは……」


さらっとあんなことキスをやりやがる

まぁね、外国では挨拶ですよ。おでこにキスなんて

えぇ、そうですよ。でこじゃなくても挨拶ですから、でこくらいどんとこいだ!ちくしょーめ!!


イシルさんのことを思うのだって、きっと小さい声より大きい声のほうがみつけやすいってことだし、おもいっきり念じてさしあげますよ


あーなんかはらたってきたな


イシルさんはあんなとこに一人で住んでるから、いいけど、町中だと勘違いしちゃう乙女続出だよ?

あれがこっち異世界では普通なのか?


『聖なる力よ我の祈りに集い敵を殲滅せよ…ホーリーレイン!!』


とか言いそうな世界だしね

( *´艸`)プクク

恥ずかしさの基準が違うのかもしれない

あ、なんか楽しくなってきた


イシルが呪文を唱える姿を想像しながら、それはそれで様になるな、と思っているうちに 村の入り口にたどりついた。








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