4話 イシルの事情




この世界には魔素というものがながれていて、魔素が濃いところには魔物がいるそうだ。


また、魔素が少ないと魔法も使いにくいらしい。

なので、村や町なんてとこはある程度魔素がないと成り立たない。

元々魔力が強い人は別みたいだけどね。

だから、町の近くはたまに魔物がでるらしい。


この辺りはというとそんなに魔素がないそうだ。

だから村には向いていない。


なんかイメージだと森の中とかのほうが魔物がうじゃうじゃいそうなんだけど、必ずしもそうじゃないんだね。

このあたりにいるのは動物のほうが多いんだって。


それでも夜は危険だよね。


イシルさんがこんなところに一人で住んでいるのは研究のためなんだそうな。

魔力をもつ魔物ともたない動物の違い、魔力の影響を研究しているとか。


ぽつんと一軒家とはいえ、それなりに広い。

敷地には母屋とイシルの研究室がある。


母屋は二階建てで、一階にダイニングキッチン、リビング、風呂トイレ、

二階には客室二つと、イシルさんの書斎兼寝室がある。


そこで客室の1つをサクラに貸してくれるというのだ。


「実はですね、七年ほど前にもサクラさんと同じように森で人間と会ったんですよ」


その人は『シズエ』さんと言ったそうだ。


「サクラさんと同じように少しふくよかな方でした」


神よ……貴方は私の前にも異世界送りにした人がいたんだね?

だからイシルさんは 私とであった時、すんなり私言ったことを信じたのか。


「一年程でお別れしてしまいましたが、豆腐はシズエからおそわったのです」


イシルが少し寂しそうに笑う。


そうか、『シズエ』さんは血糖値の数値を改善して、糖尿病とうまくつきあってるってことか。

じゃあ今はあっち(現世)にいるのかな。


「森に出ると つい、あの場所に足がむいてしまって……」


イシルが切なそうに瞳を伏せる。


「また……会えるかと」


イシルの想いが見えてこっちまで切なくなってくる。


あぁ、そうか、イシルさんがに来たのは 『シズエ』さんと会うためだったんだ。


「スミマセン……私なんかで」


恐縮です(>_<)


「何言うんですか、サクラさんに会えて光栄ですよ」


そんなに気を使わなくてもいいですよ。


「シズエがやっていたことなら少しわかります。僕にもお手伝いさせてください」


「いやいや、悪いですよそんな」


「シズエとの思い出でもありますから」


ノロケられた、のか?


「それに、僕のほうも手伝っていただきたいですしね」


手伝い?私に手伝えることなんかあるのか??


「この家は 一人でいるには広すぎる……」


ぽつり イシルがつぶやいた






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