3話 ミルフィーユ鍋
鍋って……日本人にとってめっちゃなじみがあるんですケド、それでいいのかエルフよ。
若干遠い目になりながらも手渡された野菜を洗う。
手渡された野菜 それは白菜
ですよね、ですよね、鍋といえば白菜デスヨネ
それはそうなんですけど……
ちらりとイシルをみると
ん?なんですか?と瞳が応える。
うわっ!眩しい!なんて眩しいイケメンスマイル!!
小首なんかかしげないで!ノックアウトですよイカンイカン
「それ、なんですか?」
サクラはごまかすようにイシルが作っている鍋のなかを覗き込む
「あぁ、これは僕が作った調味料です」
いい匂い そして何故かなじみのある匂い。
「干した小魚と干した海藻を砕いて混ぜたものです」
まんま出汁かよ!
声にだして突っ込むのも憚れるのでだまって具材を仕込む
今日はミルフィーユ鍋のようだ。
白菜の間にスライスした豚肉を重ねて行く
所々に舞茸も挟み込んで行く。舞茸いれるんだ、初めてかも。
それを重ねたら3~4cm幅程に切って行く
あとは縦にしてきれいに並べて煮るだけ なのだが……
どーん、と鍋の中に白いものが一丁浮かんでいた。
一丁
一丁て言っちゃったよ
いや、どうみても豆腐だもんよ
異世界(ファンタジー)にも豆腐があったのか?
もしやここは異世界ではなく、イシルさんはちょっと耳の長い外人さんなのか?
「あぁ、サクラさんは豆腐は初めてですか?」
今豆腐つったよこの人言葉の補正か?
「これは僕が豆から作ったんです。さ、このまわりに具材を並べていきましょう」
何者なんだイシルさん
◇◆◇◆◇
イシルが鍋の蓋をあける
湯気とともにふわっと優しい出汁の香り
「あ……柚子」
思わず声に出すとイシルが優しくわらう。
「わかりますか?」
「はい、いい香り」
ふんわり漂う湯気の中におたまを入れて、真ん中のお豆腐をくずしながら、イシルがお皿に取り分けてくれた。
半透明に透き通った白菜、ふるふるのお豆腐、ほんのりピンクを膜で覆うように煮えた豚肉の赤身とぷるんと弾力の見えるあぶら身の層をなした豚バラ肉が 椀の中でほこほこと美味しそうによそわれた。
「いただきましょう」
イシルがお祈りをし、サクラも手をあわせる。
「いただきます!」
とろとろになった白菜と豚バラを一緒に頬張る。
「はふ」
豚バラの甘みと白菜の甘み
異なる二つのうまみがサクラの味覚を刺激する。
「ん~~~」
豚バラの脂身の旨味サイコー!!
柚子の香りがさっぱりとしめてくれる。
「ダシがきいてますね!イシルさん、すごいです!」
「気に入ってもらえて僕も嬉しいです」
出汁手作りとか天才か!?
調味料なんて買ってしか使ったことないよ
異世界で鍋が食べられるなんて……
豆腐は少しかためだが、木綿とまではいかない、かたい絹豆腐のよう。
スプーンですくって、ダシと一緒に口にする
「ふはっ」
ふわふわと豆腐が口の中にころがる
ダシに溶け出した肉と野菜の旨味とともに
ふにゃ 思わず顔がほころぶ。
何気に白菜の芯がすきだ。
くたくたにならず、少ししゃくしゃくと歯応えが残っているのもいい。
舞茸のコリコリコリ感も。
「おかわりいかがですか?」
「ありがとうございます、イシルさん、いただきます!」
心も体もあたたまる。
「舞茸をいれるとスープが黒くなってしまうので、あまり鍋にはいれたくないのですが、体にいいので今日はいれてみました」
イシルさんの心遣いもあったかい。
舞茸って免疫力アップに役立つってきいたことがある。
キノコってローカロリーでダイエットには最適だし
それに、なんだっけ、MXフラクション?舞茸にしかないってやつ。
たしか水に溶け出しちゃうから……
「ふぅ」
サクラはうつわのスープを飲み干す
一滴もむだにはしない( ・`ω・´)シャキーン
「サクラさんは美味しそうに食べますね」
「そうですか?」
いや、照れますねなんか
「ええ、官能的です」
「ん?」
「久しぶりに振る舞えて僕も大満足です」
「そう……ですか?」
なんか今耳慣れない単語が……
翻訳補正調子悪いのか?
ふるまってもらって申し訳ないので後片付けはサクラが申し出た。
「では僕はお茶でも用意しましょう」
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