第9話 畜生道から人間道へ

 狐と山犬が観音菩薩に弟子入りをして数百年が経った頃、二匹は地上の世界にて多年の修行を積んでゆきました。その後、阿弥陀如来と観音菩薩によってその功績が認められ、今後は昼夜を問わず、人の姿に変化自在となることが叶うこととなりました。

 かねてより人間になることを切望していた狐と山犬は、慎ましやかに修行に励み、観音菩薩の教えを会得することで畜生道から人間道へと導かれたのです。


 さて、完全な人間の姿となった狐と山犬は、下界にて苦しむ人々を救済するため、師である観音菩薩の元を巣立ち、いよいよ本格的な修行の旅に出ることになります。

 特に狐は、人間界に於いて、飽くことのない欲望と煩悩に踊らされる民を睥睨しつつも、不平等で諍いの絶えない、欲にとらわれた者の娑婆苦であることに深い失望を覚えるのでした。

 一方の山犬は、地上界に於いて、法術の限界と人間の幸福について疑問を抱き始めていたのでした。


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