第2話「拠点(玄関)」

 ドーモ、プレッパー=サン。ゾンビアポカリプスに夢を見る作者です。


 というわけで拠点編で玄関の部分を今回は解説していきます。玄関部分の備えと心得は本気で取りかからないとあっという間に死にます。死因はゾンビと人間と己の怠慢になることでしょう。


 玄関。そう玄関は本気です。まずは1話でも解説した通りインターホンとチェーンロックは必須にしてください。


 そして、理由と方法は後述しますが自分が生きているということを誰にも知られないよう生きてください。

 

 これは対ゾンビではなく対人間用の心得で、ゾンビアポカリプスに限らず極限状態で人間を信用してはいけないということを表します。


 まず備品として、工具で良いので鈍器と催涙スプレーを、ドアを開けて自分で体を塞いだ時にすぐ手に取れる場所へ配置してください。これを怠ると取り返しが着かない事態になります。


 これは私自身の経験から来た心得なのです。極限状況に置いて生きている人間は生きているだけのゾンビです。アイツらは何も有りません。


 そして食料や水を求め、人を見つければそれこそ襲いかかるように、さも自分が完全な被害者かのように振る舞ってきます。


 悲しい事にこれは体験談なのです。その時はゾンビアポカリプスではありませんでしたが、インターホンに反応して顔を覗かせ、あの選択をしてしまった事こそが、私の人生の中で最も後悔した選択でした。


 それは当たり前ですが飢えています。そしてこう言ってきたのです。「備えを何もしておらず苦しいです、助けてください」


 さぁ、貴方は助けるのが正解だと思いますか?駄目です。助けてはいけないのです。


泣いてきます。駄目です

人情へ訴えかけてきます。駄目です

助け合いが美徳とほざきます。駄目です

赤ん坊がいるそうです。駄目です

病人がいるそうです。駄目です

玄関前を荒らされます。駄目です


 絶対に助けてはいけません。人生の中で最も後悔をする事になる地獄がやって来ます。


 よく覚えていてください。食料の在庫はそのまま貴方といるかもしれない貴方以外の人の寿命です。


 さぁ貴方は助けます、助けたくなりましたね?助けましたね?


 するとどうなるでしょう?そのゾンビは味を占めるんです。そして、仲間を増やしてきます。「助けてください」「助けてください」「助けてください」「助けてください」と。


 自分も極限を生きている中、善行をして一時的に美徳を満たしましたね?代償は地獄だったんです。1度誰かを助けたら、責任が産まれます。いえ、押し付けられます。


 「だって助けてくれましたよね」という責任です。


 あれからほぼ毎日「助けてください」という声が聞こえてくるのです。そしてそれは「あの人なら助けてくれるだろう」といった無責任な言葉も産み出します。


 私も苦しいんです。私にも家族がいました。なのにあの、痩せて目をギラギラさせた土色の肌をした生物はやって来るのです。一度食料を与えたあの生物は、耳を抉る勇気もない貴方が折れて食料を与えるまでずっと呻いています。


 あの生物を、あの生物こそをゾンビと言わずに何と言えば良いと思うのですか?


 玄関のドアを隔てた向こうからも、「苦しいんです」と聞こえます。何で与えたという怒号も、後ろから聞こえます。もうやめてくださいと、耳を抉り取りたくなったのは1度ではありません。


 そして日に日に弱っていくのです。声が聞こえなくなるのは救いでしょうか?「お前が殺した」という声が聞こえてくるようになりました。


 ということです。たった1度だけ美徳を満たした代償が地獄だったんです。アレを体験したくない、体験させたくない為にも、生きているということを誰にも知られないよう生きてください。少なくともその罪悪感は、拒絶するという罪悪感よりは希薄に感じることが出来る筈です。


 催涙スプレーや鈍器は万が一です。万が一にでもあの生物が生きている事を確信してドアを叩いてきたならば、一切の容赦はしないでください。これは通常の災害でもです、対応1つで人生は変わりますよ。


 でも結局は貴方が選ぶことです。もし貴方が助けることを選んでチェーンを外し、手を差し伸べたとしても私はこれ以上何も言いません。


 最後にこれは法の統治が残っていた場合のアドバイスになりますが、用意した鈍器はドアを内側から叩くのみに使った方が良いです。下手に殴ると傷害になるので、暴行をして追い出すにしても無理やり閉めて挟んでやるかぐらいが故意を主張できます。スプレーは無制限に使っても恐怖を感じた場合の威嚇なら大抵セーフにしてくれます。


 次にゾンビ対策です。


 とは言っても玄関は音を立てず、ドアを開けなければ安心です。問題は靴なのです。靴は基本的に探索用と拠点用に分けてください。


 アポカリプス時...特に浸水やウイルス災害は外からやって来ます。その時の土は汚染されている物と思い、探索用の靴は外へ隔離するか汚れをよく拭き取り、より神経質になるならば消毒もしましょう。ウイルスは玄関から入ってくる確率も高いのです。


 それともう1つ生存に大きく影響してくる対策です。それは「2分間バリケード」です。


 簡単に言います、玄関を2分で完全に封鎖するバリケード構築品を用意し、平和で暇な内に練習しておいてください。ゾンビアポカリプスにおいてドアが破られるイコール死ぬことです。


 もっと命が惜しいのならば1分台を目指すのも良いでしょう。ただ私は1分で完成させようとももう1分でより強固にする事を勧めますが。


 ああ、封鎖の方法ですか。素晴らしい質問です、貴方は良いプレッパーになれると思います。


 私の推奨はまず内開きのドアであること。外開きは申し訳ありませんが、2分間バリケードの意味が全く無いので諦めてすぐ逃げましょう。外開きは防犯の観点からしても本当に論外だからです。日本の場合は大体が外開きだろうと考えると微妙なところですが。


 では内開きの場合ですが、有名な「トイレに閉じ込められた事件」に倣ってまずドアと土間段差の間に棒を噛ませます。これが何よりもまず最初に行うことです。


 棒ならば即座に取り出せて、即座に噛ませられます。しかしこれを玄関に放置はいけません。外出の際に地震やその他の要因で倒れたならば入れず詰んでしまいます。


 そして次に水のボトルを備蓄している箱です。2L入り6本を目安にボトルを積めておき、玄関すぐの廊下にでも備蓄していてください。棒を挟み込むように箱を2つ配置できれば相当な力でも開きません。


 もしくはトランクケースが強い上にキャスター付きが殆どな金属なので便利です。


 さて貴方は玄関を2分で封鎖しました。次に行うことは退路の確保と予めしておいた脱出セットを手に取り待機です。


 確認をしてもまだ逃げ出さないでください。拠点の外は地獄です、2分で念入りに封鎖をする事は拠点への侵入を最大限防ぎ、拠点を捨てない事を重視しています。耐えましょう。判断を誤ればその先に待っているのは困窮と死です。


 音がしなくなりましたね?バリケードはそこから半日は完全に解除しないでください。しかしすぐにそこを退路と出来るようにもしてください。


 そして退路をよく確認してください。回り込んでくる場合があります。その際は退路もバリケードで封鎖です。まだ侵入された訳ではありません。兎に角、拠点を守ってください。侵入されなければ貴方の勝ちです。


 ひとまずこれで、玄関で行うゾンビ対策に関しては終わりです。玄関は全ての侵入口であり、最後の城壁でもあります。決してこの場所だけは疎かにせず、ゾンビと関わり合うこと無く生き延びましょう。


 次回は風呂場やトイレ、廊下に関してを書きたいと思います。

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