第21話 あっちどっち

「人の言葉をしゃべる猿がいるんだってさ」


「それもう毛深い人なんじゃね?」


「いやいやいや、ちがくて!日本猿が喋るんだって」



学校帰り、コンビニでアイスを食いながら友達がふいに近所の裏山を指差して言い始めた。



「ホームレスが住み着いたんじゃね?」


「山に?」


「川もあるじゃん、畑も近くにあるし」


「あーでも、行ってみない?暇だし」


「んー…そうだな、行ってみるか暇だし」


友達とTはとにかく暇で、今度学校が休みの日に裏山に入ってみることにした。




「裏山の入り口てこんなんだっけ?」


「いや、どうだっけ?覚えてないなぁ」


幼い頃に何度か来ていたが大きくなってからは来ていなかった。

山道への入り口は厳重ではなく、工事現場用の立て看板に立ち入り禁止と書かれているだけだった。


ただ、以前よりうっそうとしているようだ。管理されていない感じではあった。


「まあ、入って川遊びでもしようぜ」


「お前、猿目的じゃないだろ」


「しょうがないじゃん、暑いんだから」



友人の目的は川になっており、Tも暑さに耐えられなくなり、山の中にある川へ向かった。


川は子供の頃の記憶と変わらずにそこにあった。

綺麗で流れも緩やかっだった。


Tは水着なんか持ってきてないのでパンツ一枚になり、友人はしっかりと水着に着替えて遊び始めた。

川には魚もいて、手掴みを試したり、少し高い岩から飛び降りてみたら、底が浅くて顔面強打して鼻血だしたり、やんちゃな男子の川遊びを十二分に楽しんだそうです。


たくさん遊んで夕暮れどき、もう当初の目的を忘れていた二人の前に一匹の猿が現れたそうなんです。


目的を忘れていた二人は猿だ猿だと興奮していたそうなんですが、Tは思い出して水をかけてやろとした友人を止めて様子を見ました。

しばらく、川の音しかしなくなり、猿はじーと二人を見つめて来たんだそうです。

二人はなんとなく怖くなり、もうその場をさろうとしたそうです。


猿から目をそらし、服を来はじめた所で


「どっち?」


声が聞こえてきました。

お互い目を合わせ、目だけでお前が喋った?とアイコンタクトをして二人同時に首を横にふる。

二人は猿の方をみると、猿は自分たちを指差してた。


「どっち?」


本当に言葉を喋ったそうなんです。

Tはビックリしすぎて転んでしまいました。友人は川原の石を一つ拾って猿より少し上に遠くに投げました。


「あっちだよ!」


すると猿は投げられた石の方向へ走って消えたんですって。

猿の姿が見えなくなってからは、二人して慌てて逃げてきたと。

その後、私の友人Tには何も起きていませんし、一緒にいた友人も同窓会やらで顔を普通に合わせるので祟りだなんだのにはあってないそうです。

友人があった猿はなんだったんでしょうね。

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