第20話 馬が一匹、羊が一匹

とある山にハイキングに訪れた男性がいた。

彼はその山を上りなれていて、他の登山客に挨拶もしつつ、軽い足取りで登っていました。


ですが、いくら歩きなれたとはいえ、体力は無限にあるわけではありません。

男は休もうと登山客用に作られた簡素なベンチに腰をかけました。

その後、男はあろうことかウトウトし始めた。


こんな所で寝るなんて他の登山客もいるし、もし起きた時に夜であれば最悪凍死もありえるだろう。

だが、男は眠気に抗えずにそのまま深い眠りに落ちていってしまった。


ハッとして男が目を覚ますと、目の前には草原が広がっていた。

男はすぐに今自分は夢を見ていると気づいた。

それと同時に焦りを感じた。


山の夜はかなり気温が下がる。早く起きなければ命に関わると。

しかし、夢はなかなか覚めない。どうしたものかと考えていると、 草原に一匹の馬が 優雅に 蹄を鳴らして走っているのに気づいた。 男はふらふらとその馬に 近づいて行った。


馬は小さく嘶いたが 逃げることなく男の接近を許したのだった。

男は馬を2~3度撫で、何故か跨ってみようと思った。

男は乗馬経験がないはずなのに、すんなりと馬に乗ってみせた。

男は馬の上から鬣を撫でてみた。ごわごわとした感触がリアルに手に伝わってくる。

撫でている最中に何かに手が当たった。


何だと、鬣をそっと撫でると、鬣の中から腕が生えてきた。

男が驚いていると腕が男を掴んで鬣の中に引きずり混んできた。

抵抗する事ができないまま、男は鬣の中にするすると入って行ってしまう。

次に男が目を開けると、そこは一面たんぽぽ畑が広がっていた。


男が歩く度に、黄色いたんぽぽを踏み、そして綿毛が散った。

綿毛が一段と激しく散っている所があり、そこには一匹の羊がいた。

男が羊に近づいても羊は逃げることなく、そこに座り込んだ。

柔らかそうな羊毛に顔を埋めて、男は目を閉じたのだった。


翌日、とある山で男の変死体が見つかった。

登山客が見つけたそうだが、その男は笑って死んでしたらしい。

口や目に何かの植物の綿胞子をめいいっぱい詰め込まれて。

そして、男の周りには動物の蹄が男を囲うように地面に跡がついていたという。

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