第12話、キャンプ


この話は私が大学生の時の話です。


私はとあるアウトドアサークルに入っていました。

メンバーは少なく、無口な男性で部長のA

ノリが軽い男性のB先輩、C先輩

同じ学年の女子D

そして私の5名のお遊びサークルでした。


私がサークルに入って初めての夏。

近場のキャンプ場にキャンプしに行く事になりました。


B先輩がそのキャンプ場の穴場を見つけたと言って、私たちはそこに連れて行かれる事になったのです。


穴場と言ってもキャンプ場の外れの外れ、恐らく素人の私でも分かる。

立ち入り禁止の場所にキャンプしようとしていました。

A部長は怒っておりましたが、B先輩C先輩Dの3人に押しきられてしまっていました。


恐らく立ち入り禁止の場所なのですが、他のキャンプ客がいないだけで、拓けていて、とても静か。

マナー違反である事を除けば、初めてのキャンプ体験としては良さそうな場所でした。


「大丈夫?」


私に声をかけてきたのは部長でした。

夜、チェアに座ったままの私を心配したのでしょう。一応、テントを組み立てたり、料理したりはしたので、何もしてないと怒ってはいないようでした。

ただ、あの3人の雰囲気が苦手で距離を起きたかっただけです、と言いたかったけど、大丈夫ですと言って、目の前の景色に視線を戻しました。


「ごめんね、なんかこんな事になって」


「いえ!部長が謝る事じゃないですよ~。そういえば、ここ、なんで立ち入り禁止なんですかね」


「多分…動物だと思う。だいたいのキャンプ場の立ち入り禁止は動物か川や土砂の自然災害から人を遠ざけるための禁止だから」


意外と深刻な理由があるんだな…。

かなり楽観視して、怒られれば謝ればいいだけと思っていた私は少し恐くなった。


「まあ、そうそうないけどね」


部長は少し笑うと何かあったら言ってね、と言い残し、男性陣が泊まるテントに入っていく。

女性のDもいる男性陣のテントはガヤガヤとうるさく、とても入りたくありません。


私は誰もいない女性陣用に建てたテントに入ろうと立ち上がりました。

その時です。


「どっち?」


突然、声をかけられました。

声の方を向くと、そこには着物をきた男の子が立っていました。


「え?」


「どっち?」


驚く私に、男の子は同じ質問をし、2つのテントを交互に指差します。


「な…何?迷子…かな、どうしたのかな」


恐怖で声が震えます。どう考えても、この状況はおかしいからです。


「どっち?」


男の子は、同じ質問しかせず、私の答えを待っていました。

私には質問の意味が分かりません。どうすればいいのか、夏なのに寒気が止まりません。


私が固まっていると、男性陣側のテントから、C先輩が出てきました。

そして私と男の子に気がつくと、男の子に近づいてこう言いました。


「あっち」


C先輩が指差したのは、誰もいない女性陣用のテントでした。

C先輩はその後、私の腕を引っ張り、自分たちのテントに入れました。


「あれ、結局こっちきたのー?」

「来て正解、来て正解!ウノしようよー!」


入ったとたんに、B先輩とDに絡まれてしまいました。

C先輩にあれは何なのかと聞こうとした瞬間、ドシンと大きな振動が一度だけ起きた。

部長がテントから飛び出して、「あぁ~」と落胆の声をあげた。


テントから出てみると、私たちが寝るはずのテントがまるで巨人に踏み潰されていたかのようにぐちゃぐちゃになっていた。


「C,Cあのさ…なんかいたの?」


「うん、ちょっとDPS高そうなヤツがいたから。さすがに攻撃されたくなくて、そっちにタゲ取らせてもらったわ」


「そ、そっか~…それなら仕方ないかなー。ああ、俺のバイト代注ぎ込んだテント…。だから、お前と立ち入り禁止地帯行きたくないんだよ…」


はっきり言ってA部長もC先輩も何いっているか分からなかったが、C先輩が助けてくれた、でもC先輩が原因でもあるみたいだった。


私たちは翌日、壊れたテントを片付け、そのキャンプ場から撤退した。

その時、B先輩が嬉々としておしえてくれた。


C先輩はかなりの霊感があり、よく怨霊に絡まれるが対処も出来る実力者である事。

その怨霊が対処されると何故かA部長が不幸に見回れる事。

それが楽しくて仕方なくて、わざと心霊スポットっぽい場所をB先輩が選んでキャンプしているという事。


それを聞いた私とDはB先輩にドン引いて、サークルをやめることにした。

やめることにしたのだが、何故かやめられず、私も様々な体験をするのだが、これは別の機会に話します。

聞いてくれてありがとうございました。

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