第6話、学校の七不思議


「ね、ね、学校の七不思議回ってみない!?」




本当に唐突だった。


ある日の放課後、友人のさと美が私に声をかけてきた。




「ええ、マジで言ってる?てか、うちの学校、七不思議なんてあるんだ」




「うん!ありきたりなのが!」




「もうそれ聞いた段階で付き合う気失せるんだけど」




さと美の提案は、いつも唐突だった。


しかも、言い出したら聞かない子だから、最終的には付き合わされるのだ。


まあ、嫌な気分ではないけど。




「だめ~?まき~?」




「しょーがない!明るい内に終わらせるならいいよ」




「本当!?私も暗くなってからは、さすがにきついな~って思ってたの!行こう行こう」




それから、私たちはまだまだ生徒が残る中、七不思議探索をし始めた。




「最初の一つは~…歩く二宮金次郎像!」




「……うちの学校、その銅像なくない…?」




「…え、うそ。なかったけ?」




「いや、ないし!どんだけ学校の校庭に興味ないんだよ」




「ありゃ~」




さと美は頭をかきながら、手にもっていたスマホをいじりだした。


どうやら、次の怪談を読んでいるようだ。




「学校掲示板ってやつ?それ」




「そーそー。先生もチェックしてるやつだから、部活のお知らせぐらいなんだけど。この七不思議の板は削除されてないんだよね~」




「くだらなすぎるからねぇ」




「ぐふふ、まきさんまきさん、そのくだらない事…やってますよ」




「うるさい。他になにあるのよ~」




「ん~とねー」




さと美が調べた七不思議はどれもありきたり…というか、どこかからコピペでもしたかのようなお粗末なものばかり。




「音楽室のベートーヴェンの目が光る~あとは」




「ちょっと待って」




「何!?何か感じた?」




「今ので七個目。次ので八個目になるよ」




「うわぁ…。うちらの七不思議、ひどすぎ?





確かにひどい。


私とさと美はスマホを見ながら校内をうろうろしていると、美術室まで来ていた。




「あ、美術室の七不思議あるよ~」




「はい、石像の目が光るやつ~」




「違うよ~あれ?」




スマホとにらめっこをしていたさと美がふいに眉間にシワを寄せ、立ち止まった。




「美術準備室のkぎを見たものは呪われる」




「kぎ?」




「なんかうちまちがえしてるみたいで」




「kぎって鍵でしょ?そんなん美術の先生が持ってんだろうから、毎日呪われ放題じゃん」




「呪いのブッフェ…」




「ねぇ、いけない。まあ、とりあえず準備室開かないだろうけど、見るだけ見るかー」




私たち二人は静かな美術室に入った。


美術室の黒板の隣に準備室の扉はあった。


私は奥にある準備室まで歩いていると




「ん?」




硬い何かを踏んだ。


なんだ?と思い、足をあげた。


すると、そこには一本の赤錆た釘が落ちていた。


これを踏んだのだ。




「どうしたの?」




さと美が話しかけてくる。


私は動けないでいた。先ほどの話。美術室準備室のkぎ……まさか、鍵じゃなく釘、か。




「あ、なんでもない」




私はそんな事はないはずだ、と準備室へ歩く。


そう、怪談が七不思議が本当にあるわけないじゃないか。


あんなのきゃーきゃー騒ぎたいだけの、私たちみたいな奴が作り出した…。




「まき~大丈夫?ってドアきもっ」




さと美は準備室の扉を見て口を押さえる。


準備室の扉、いつからこうなっていた?私達が美術授業を選ばなくなる前は普通の扉だったはず。


それがなんでこんな、こんなに釘が打ち付けられてるんだ。




「か…帰ろうか。なんか本物見て満足~」




「そ、そうだね。かえろかえろ」




私達の声は震えていた。


扉に背を向けて、歩きだしたとき




どん




背後のドアから音がした。


私たちは背後も振り向かず、ダッシュで学校を出た。




二人で話してもよくわからなかった。


ただ、あの怪談が…呪われた釘が本当にあるなら、私はあれを踏んだのだ。




私は、これからどうなるんだろう。

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