第4話、足をくれ

私はしがないOLである。


毎日毎日、同じ道を歩き会社へ行き、


仕事をして、帰る。


そんな日しか、私には来なかった。




しかし、あの日は違った。


私はあれに会ってしまった。




疲れた。


仕事帰り。いつもの道を歩いていた。




街灯がぽつん、ぽつんとある道を歩いていた。


明日の仕事の事を考えていると、3つ先にある該当の下に何かいるのに気づいた。


ゲームでもしてるのか?




街灯が2つ先までそれとの距離が縮まる。




んん?なんだあれ?人だよね。




目があまり良くないせいか、なんとなくそれに違和感があったが、そのままそれに近づいていった。




1つ先まで距離になった。




私は悲鳴をあげそうになった。




それは逆立ちした人間だった。


しかし、上に向かってある筈の足はなかった。


そして何より、頭が頭が二つある。


それが私の数メートル先にいるのだ




えっと、何




この近所にあんなのいたの?


混乱する。とにかく関わりあいになりたくない。




別のルートで帰ろうと踵を返そうした。




しかし、背後から声がした。




しわがれた老人の声。




足がないなぁ


足がないねぇ




嫌な汗が身体中から噴き出した。


間違いなくあれが喋っている。




足がないとお、不便だなあ


足がないと、不便だねえ




ゆっくりと私は振り返る。




おや


あれま




私はそれと目が合った。




足があったぞ


足がありましたね




それはニヤリと笑った。


そして、ペタペタと手を動かし、こちらに寄ってきた。


私は走った。


走っても後ろからペタペタという音とあの生き物の声が響く。




おーい、まてえ


おーい、まってくれよお


足がないと不便なんだあ


足がないと不便なんだよなあ


なあ、助けると思って


なあ、頼むから


あしをくれえ


あしをくれんかなあ




誰がやるか!


私は走って走って駅前の繁華街についた。


人もたくさんいて、あいつらのペタペタも声も聞こえなかった。




はあはあ




息を落ちつかせ、家に帰る事を早々に諦めて、私は漫喫に泊まることにした。


受付をし、フラット席に寝転がった。


完全個室ではなく、足元には隙間があり、床が見える。




私はみた。


二つ綺麗に並んだ手を。

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