第3話、移動する女


大学生の時、Tという友達がいた




そいつとはうまがあって、しょっちゅう遊びにいってた。


夏は海。


冬はスノボ。




イベントがある度に遊んでスマホで写真撮って思い出を残していた。




三年生になってしばらくした日。


Tが青白い顔をして、俺に話しかけてきた。




「なあ、Aやばいかも」




「なにが 単位?」




「いや、昨日さ スマホのアルバム見てたんだけどさ。


なんか 顔?みたいなのが写ってるんだよね」




そりゃあ、写真なら顔写ってるだろと突っ込みたかったが、Tの言い方から察するに心霊写真的なのが取れた、と言いたいんだろ。




「マジ?どっかに送って金貰おうぜ」




「いや、あのさ」




「どした」




「俺もそう思ってさ、お前に話すのわくわくしてたんだけど、今日さ、ちゃんと俺の勘違いじゃないか確認したんだよ。


そしたら、顔、なかったんだ」




「なんだよー、結局勘違いオチ?」




「違う 移動してた」




「は?」




「となりの写真に移動してた」




「は?」




意味が分からない。


俺はひどい顔をしていたと思った。Tがスマホを取り出し、アルバムを開き、写真を見せてきた。




俺とTが居酒屋で酔っている写真、2人の間に顔が白い女が立っていた。


確かに これは心霊写真だ。


でも、移動してるって?




「昨日はこの写真だった」




スライドして見せてくれたのは、ほぼ同じ時間ぐらいにとった居酒屋の写真。




「いや、心霊写真は心霊写真なんだろうけど


勘違いじゃね?移動は。


おんなじ居酒屋で連写ってわけじゃないけど、とってたじゃん?」




おれはそう言ったが、Tは眉を眉間に寄せたまま黙っていた。


俺はとりあえず、消してさ。マジで移動してたらお祓いいこーよっと背中をぱんっと叩いた。




しかし、それ以降Tはどんどん元気がなくなった。




やはりあの写真に写ってた女は移動していたらしい。


Tはあれ以降、あの女を見せる事はなかった。




あの女が一番新しい写真まで来たらどうなるんだろ。




俺はそんな事を一瞬考えたが、確認するのが怖かったんだ。


結局、俺はTを見捨てたんだ。




しばらくして、ある日夜の0時過ぎごろ。


部屋でスマホをいじっているとTから電話があった。


なにかあったんだと思い、すぐに電話に出た。




「もしもし?」




『あ、ごめん。今、大丈夫か?』




Tは至って普通だった。


なんだ、大丈夫そうだな。写真、解決したのかな。




『あのな、あの心霊写真の女なんだけど消えてた』




「ああ、移動してたやつな。自然にいなくなったの?成仏したんじゃない?」




『ううん、違うんだ。』




「え?」




『あいつ、どんどん移動していって昨日一番新しい写真まで来たんだよ』




「じゃあ、今日はどうなったんだよ」




『あのな、今な、俺の目の前にいる』




「は?」




一瞬耳を疑った。しかし、次の瞬間、スマホから聞こえてきたのはTの狂ったかのような笑い声だった




狂ったかのようなじゃない、狂ったんだろう。


通話は不自然に途切れた。


俺はすぐにTのもとへ向かった


深夜だったが、Tの部屋のアパートのベルを鳴らしたが出なかった。


警察を友達が自殺しようとしていると言って来てもらった。


大家さんもきて、部屋の鍵を開けてもらい、警察と中に入ったがTはいなかった。




それから、事情をきかれたり、Tの両親にTが居なくなった事を伝えたり、気が滅入る事をたくさんした。




あれからTの姿はみていない。

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