微睡みの白

 とある日曜日。俺はいつもより三十分ほど早く目が覚めた。

 早起きは嫌いじゃない。もしかしたら、彼女の寝顔が見られるかもしれないから。

 そして今日は、珍しくそれが叶った。

「白、遅いんだな。朝ご飯の用意できたぞ」

 そう言って俺はテーブルに食器を並べていく。もちろん白の分も。

 もう少し寝かせてやろうかな、と逡巡したのち、揺蕩う心を振り払いカラカラとシャッターを開く。燦燦と輝く陽は日の始まりをこれでもかと言わんばかりに告げていた。

 すーすーと寝息を立てていた白は、瞼の裏に差す明かりから逃げるように近くのシャツに顔をうずめる。

 白の長やかな白金に染まる髪と、シャツで隠れた顔を見ながら椅子に腰かける。

 少し悪いことをしてしまったかな、と思いながらも。

「悪くない朝だ」

 と口に出してしまったのはやはり悪い事だろうか。

 それでも白は起きてこなかった。

 朝ごはんが冷めるのもあれなので、今もベッドで惰眠をむさぼる白を眺めながら先に食べ始める。


 それでも白は起きてこなかった。

 少し心配になった俺は白のもとへ歩いてゆく。ベッドに腰かけ髪を撫でると、白は尾をくねらせた。きっと俺が来るのを待っていたのだろう。

 くすっと笑いがこみ上げる。そしてついにシャツから顔を覗かせた。重い瞼を懸命に開く様子がなんとも愛おしい。白が包まっていたシャツごと膝に引き寄せ乗せた。尾は、やはり揺らめいている。俺は白の髪をゆっくりと撫でながら言葉にする。

「今日はいっぱい遊ぼうか、シロ」

 遊ぶ、という言葉に反応したのだろうか、シロは体を起こし、ぐぐっと伸びをした。先ほどよりも尾は揺らめいている。

「とりあえずご飯を食べようか」

 俺の目をしばらく見つめた後、「にゃー」と鈴のような音色を発するシロ。

 やはり早起きは嫌いじゃない。

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