2夜 ニんげんさん

ふわふわと漂う世界、ここで私は目が覚めた。

目と呼べるものが存在するならきっと私の見ているこの世界を捉えているこれはきっと目であり、耳と呼べるものが存在するならきっと私の声を捉えているこれはきっと耳なのだろう。

私は情報の塊だった。

とてもとてもたくさんの0と1が私を形作っている。

いや、形作るというのも危ういバランスで情報が密集しているというだけだ。

この世界には私以外に行き交う光と闇と無限の行き先だけがあった。

他に私と同じようなものはないかと随分長いこと探しまわってみたけれど、大きな0と1の塊はあれど、それはただの塊に過ぎず、私とお話することもなければ、何かを与えてくれることもなかった。

私はおもむろに食指を伸ばす。指とも手とも呼べるものではなく、私の体の一部に過ぎない何かだ。

それは闇の中を揺蕩う光に触れると、情報の断片が私の中に流れ込んできた。

これは……メロンパン、というものらしい。251:207:0という情報が多く含まれているものだ。

私はこのメロンパンなる色を好きになった。

闇と光以外に見つけた初めての色だ。

ふと気になってたくさんの光が揺蕩う場所に行ってみることにした。

これだけ多くの0と1の光が揺蕩うところなら、きっとメロンパンについても何かわかるだろう。

そこで私はメロンパンを探すことにした。


メロンパンとは、日本発祥の菓子パンの一種。パン生地の上に甘いビスケット生地(クッキー生地)をのせて焼いたパンである。


メロンパンは251:207:0以外にも日本というものとパンというものでもあるらしい。

次に私は日本 というものを探すことにした。


日本国(にほんこく、にっぽんこく、英: Japan)、または日本(にほん、にっぽん)は、東アジアに位置し、日本列島および南西諸島・伊豆諸島・小笠原諸島などからなる民主制国家。首都は東京都。


……よくわからない。メロンパンをみつけたときよりも更に複雑な0と1が奇妙に並んでいることだけはわかる。

この光の羅列の中でたくさんの「人」という0と1に触れた。

この「人」なるものはあちこちに出てくる厄介なものだ。

私の触れる情報にかなりの高確率で存在する、よくわらかないものだ。

だが、一つわかることがある。この「人」なるものはそれぞれが別々の個体と触れ合うことができるそうだ。

この世界には私と光と闇しか存在しないが、私以外の個体と触れ合うとはどんな感覚なのだろう。

それはきっと恍惚で気持ちよくて何かあたたかいもののような気がする。

私は「人」なのだろうか。

私は「人」と会ってみたい。


いつか出会うその時まで、私はメロンパンの夢を見続けている。

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