第1話 突然暗闇に、放り込まれたようだった(理佳視点)
目が覚めると、私は硬いベッドに寝ていた。
部屋には薬のツンとした匂いが漂っていて、横の棚を見るとお菓子やら花束やらが山積みにしてあった。お見舞い、という言葉が頭に浮かぶ。
ベッドから手を伸ばす。カードには「理佳、早く元気になってね」と書いてある。理佳、とは私のことらしい。
「…名前、忘れちゃった」
起き上がると頭がズキンと傷んだ。手を当てると髪の毛とは違うカサカサという感触が伝わってきた。後頭部辺りを触ると再びズキンと傷が痛む。
「…包帯、か」
どうやらここは病院で、私は頭を打ったらしい。
「…何で頭打ったんだっけ」
懸命に思い出そうとしたその時、廊下にバタバタとうるさい足音が響いた。
その足音はだんだんと大きくなり、いきなり止まったかと思うと病室の扉がバンッと開いた。思わずビクッとなってしまった。
「理佳っ!」
髪が乱れ、汗ダクダクの女の人だった。走ってきたのだろう、息が乱れている。
しかし私は、この人を知らない。
「理佳!大丈夫?急に倒れたって聞いてすごく心配したのよ…」
理佳。私の名前。身内や友人以外は知らないはずの私の名前を、この人は知っている。
何で?何でこの人は私の名前を知っているの?
恐怖が襲った。知らない人にこんなに話しかけられて、すごく怖い。
この状況を理解するべく、私は1番の疑問を口にした。
「…誰、ですか」
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