第21話 大波乱!部活勧誘 後編!
「もうひとりの部員?あら、部長はそんなことも話してないのね?彼の名前は
「あいつはお化けだ……」
真剣な目で言う稲宮先輩を、部長ったら、と月帆先輩がたしなめる。
「酷いコト言うじゃん?」
「お前も知ってるだろ!アイツの……へ?」
「陰口叩くなんてさぁ……もしかして流夏くんさぁ、またイイ夢見たいの?」
「おま……お前いつからそこに……!脅かすなよ!」
窓際の、腰ほどの高さの棚に、さっきまで誰もいなかったはずの場所に座っていたのは、話題の当人三辻風麻先輩だった。写真の通りの、銀髪に垂れ目で長身の男子生徒だ。そうする間にも稲宮先輩と三辻先輩はわちゃわちゃと揉めている。にしても、三辻先輩はどこから入ってきたんだろうか……。
すると、月帆先輩がぱんぱんと手を叩いて
「もう、部長も風麻くんも、遊ぶなら後でやりなさいな。今はお客さまが来てるんだから」
と、仲裁する。俺のせいじゃないぞ、と食い下がる稲宮先輩をスルーして、三辻先輩はわたしたちに笑いかける。
「話聞いてるかもだけど、名前は三辻風麻ね。え〜っと、君が淡谷雪さんで、君が藍染穂波さんかな?……ふぅん、君が流夏の可愛い幼馴染みちゃんかぁ……」
「風麻〜〜ッ……!余計なことを言うなッ」
「あはは、ごめんごめん部長ぉ」
***
「さっきは取り乱してごめんな」
月帆ちゃんと風麻さんを奥の部屋に押し込んで、稲宮先輩は仕切り直す。……気軽に呼んでと言われて、先輩たちの呼び方を変えてみたはいいけど本当にいいんだろうか……。中学生の頃は先輩が礼儀にうるさかったので少し遠慮してしまうが、仲良くしてねなんてあの美貌女子に言われたらもう従う他ない。
「自分は安心したよ。ルカくんちゃんと友達できたんだなって」
「どういう意味だそれは。……まぁいい。ふたりはどうする?うちの部活は珍しいし自由度も高いし、人数が少ない故融通も効きやすい。兼部も止めない。けどまあ、部員にはセクハラ女子とお化け男子がいるから、嫌っていうなら止めないぞ」
「お化けって……風麻さん、そんなにお化けっぽかったですか?」
「アイツの周りはな……出るんだよ。写真を撮れば何か映るし、近くにいると幻覚を見ることもある……!」
「……ルカくん遊ばれてるよ絶対……」
ぼそりと穂波がつぶやくので、わたしは思わず吹き出した。その日は2人で入部届をもらって帰った。
***
「雪ちゃん、もしかしてだけど、自分に合わせて乗り気じゃないのに入った……とかじゃないよね?気を遣わせてたら嫌だから……」
帰り道、穂波がふと聞いてくる。あまりに神妙で伺うような表情に、つい笑ってしまう。確かに、穂波と一緒にいたいってことが理由に入らないわけではない。
「穂波とはもちろん、あの先輩たちと一緒に高校生活送りたいって思ったよ。だから気を遣ってるとかじゃ全然無いよ。それに……わたしたち、とっくに変に気を遣わないでいられる関係でしょ?」
ニッ、と笑う。穂波とは知り合ってまだ間もない。幼馴染みとかは羨ましいけど、時間の差は埋まらないけど……今この瞬間、隣にいられて、同じ時間を生きられる。今はそれだけで良いような気さえしている。
「そうだよね……!」
穂波もわたしに釣られるように笑う。次の日一緒に入部届を提出しに行く約束をして、その日は別れた。
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